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□北の海のユン
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「にんげん。とても、きれい。ユンとちがう。あしが、ふたつある。ユンは、あるけない、さかなのあし。あるくって、どんなかんじだろう。ことばも、いっぱいしってる。かしこい、にんげんは。いいなぁ」

前に一度だけ、ユンは人間を見たことがあります。
ユンの住む海の上で、王子様の誕生日を祝うパーティがありました。
あいにくその日は大嵐になり、海に落ちた王子様を助けたのがユンだったのです。
浜辺に引き上げてあげたユン。しかしユンはうまく喋れません。
そうしているうちに、他所から現れた女の子に助けて貰ったと勘違いした王子様は、ついにはその女の子と結婚してしまったのでした。

「ユンもにんげんだったらよかったのに」

ユンは悲しくなりましたが、海の中にいるせいで、自分が涙を流しているのかどうかもわからないのでした。
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