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□君へ。
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なんだか世の中の偉い人たちは、
やたら難しい言葉を使って恋や愛を語るけれど、
僕は頭が良く無いから、
上手い言葉を捻り出すことができなくて、
ほんとに、シンプル、
ただ君が好きなんだ、
例えばそう、
お昼ご飯を食べるときに必ず「いただきます」って言うとことか、
笑うときに口元に手をあてるとことか、
真面目にノートとってる姿だったり、
髪を耳にかける癖とかも、
結構好きだったりするんだ、
でも君の彼氏が君の横にいるときの君の笑顔とか、
君が君の彼氏とおしゃべりしてるときにワントーン高くなる君の声とか、
どっちかっていうと嫌いだったりするんだよ、
君は僕なんか名前も知らないだろうけど、
僕は入学前の、
合格発表のときから君のこと知ってるんだよ、
友達と涙を流しながら喜び合う君を見て、
ああ春からこの子と同じ学校に通うんだ、
そう思ったのが始まりだったよ、
思えばあのときから見てるだけの僕だよ、
話しかけもしない僕のこと、
君は知ったら気持ち悪い人だと思うだろうね、
だから僕は気付かれないように、
適当に周りを見るふりなんかしながら、
首を回す瞬間に君を見たりするんだよ、
今まで全く恋愛経験がなかったわけじゃないのに、
なんで今回に限ってなんて考えたりするよ、
でも割りきってるっていうか、
そこまで辛くなかったりもするよ、
それなりに女友達もいるし、
遊びに誘われることもたまにあるしね、
あと実はこんな僕にも、
彼女って呼べる子がいるんだよ、
嘘じゃない本当のことだよ、
でも君の場合は彼氏が大切だろうから、
他の男、
例えば僕なんかを、
好きになってはくれないだろうね、
でもさ、
もしこの想いが通じたとしても、
実際にどうしていいかわからないよ、
まぁその「もし」はあり得ないだろうけどさ、
だけど考えるんだ、
もし君と僕が、
君の彼氏や、
僕の彼女と、
出会う前に出会えていたらって、
空想するんだよ、
僕ら恋人になれなくても、
せめて友達にはなれたのかな、
そんな具合にね、
もし付き合ったりなんてしてたら、
それこそファンタジーの世界だよ、
気持ち悪い僕だけど、
考えてしまうよ、
君が好きだ、
君が好きだ、
君が好きだ、
君のことが、
大好きなんだよ、
辛くはないけど、
少し切ないよ、
ねえ、
何故だろうね、
今目の前に君がいるんだよ、
背中を向けているわけでも、
他の誰かを見ているわけでもなくて、
僕の、
目の前に、
正面を向いた、
君がいるんだよ、
僕の彼女が、「私の親友を紹介したい」って言ったんだ、
そしたらその親友って君のことだってね、
彼女と君が一緒にいるとこなんて、
見たことなかったよ、
反則だよ、
君は「はじめまして、よろしくね」なんて言いながら、
ノリよく手なんか差し出してるんだ、
はじめましてなんだろうけど、
僕は君のこと君が思ってる以上に知ってるわけで、
それは一方的だからいいわけで、
このバランスが崩れてしまうと、
とっても危険なわけで、
僕は君に恋してるからこそ、
よろしくする気なんて無いわけで、
その握手という行為は、
本来の意味では成立しないはずなんだ、
だからこうやって君の手を握ろうと僕が伸ばしかけた手に、
なんという意味があるんだろうね。

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