テキスト
□道徳どう説く?
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「ねー相楽くん見て」
楽は信の前に立つと左の掌を広げて信に見せる。
「蚊を殺したの」
「そうみたいですね。汚いです」
信はすぐに目を逸してバイオリンを手に取る。
「小学校の道徳では人間も動物も…小さくても命の重さは一緒だって習ったのにね」
溜め息をつきながら手についた元は虫だったそれを払い落とす。
ゴミ箱に捨てろよと言わんばかりに信は顔を歪めた。
「虫にも血は流れてるのに」
悲しそうな瞳で手を見つめ楽は呟く。
その手には赤く黒い跡がまだ残っていた。
「それきっとあなたの血ですよ」
「あ、そっか」
「馬鹿ですか」
「ふふふ、じゃああの蚊はきっとA型だわ」
楽はその日初めて微笑んだ。
長い髪が微かに揺れる。
「命の重さが一緒なら見園さんと蚊の命も同じですね。」
すると楽は口を尖らせた。
「何よ、私があの虫ケラと同じだって言いたい訳?」
あ〜あ。
今日は鎮魂歌でも弾こうかとふと思った。
……もっと愛して欲しいよね
END
高2の時に書いた信と楽シリーズ使い回し3弾目です。