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□憂鬱カルボナーラ女史
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昔からチーズやらバターやらホワイティなクリーミーなものが何やらあたしは嫌いだ。
「…コレ?」
「うんっ!」
ニコニコした親友が出してきたのはまさしくあたしの嫌いなアレだった。
ああ。世界は容赦無く回る。
「ねっ、見た目どうかな?とりあえず合格?」
今度彼氏が家に来る時に備えて自分が作った料理を試食してみて欲しい。
まぁたしかにあたしは可愛いアンタの為と承諾したさ。
だけどさぁ〜
なんていうか
ムリ。
「マキにしか頼めないんだってばー!あたし他にこんなわがまま言える友達いないし味おんちだし」
沙紀は可愛い。
なんてったってあたしの一番の親友だし気が付けばもう12年の付き合いだ。
だからこそアンタあたしが嫌いな食い物くらい知っとけよ!
「マキ」
「ねえ沙紀、あたし」
「いつもありがとうねっ」
……負けた。
そうやってあたしはいつも沙紀に振り回されてきたんだ。
目の前のスパゲティを見る。
これをあの子の彼氏は美味しそうに食べるんだろうな。
あたしはそれを口に運ぶとゆっくりと咀嚼した。
あたし達が大人になるまであと5年。きっと10年先はこうやってお互いの家で会ったりする事もずっと少なくなる。
…きっと相手に固執してるのはあたしの方だ
「おいしい?」
「うん、まぁ多分」
「えー」
今笑い合ったりふざけ合ったりすること。
慰め合ったり励まし合ったりすること。
こうして
あんたに会うということ。