テキスト
□僕発君行き
1ページ/2ページ
それはかれこれ15分前のこと
受話器越しに聴こえる君は、
震えていただろうか?
けれども僕は適当な言葉を持ち合わせてはいなくて
ただ抱きしめることも出来なくて
君の傍に居無くて
ただ機械に向けて「大丈夫だよ」と、
自分が愚かで
言ってしまえたらどんなに楽だろう
「僕が居るから大丈夫だよ」と
そうして何が出来るだろう
僕は一言
「待っていて」
ポケットにはチューインガムと鍵とハンカチ
それでも君の手を迎えるスペースはあるよ
そして走る
間違ったっていい
「僕が居るから大丈夫だよ」と、
「好きです」
の言葉を持って
君の元へと今
僕は走っている
君がいなければ僕はきっと
「本当」の意味なんて知らなかった
END
あとがき→