テキスト

□クロス
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天使のような女の子。
花のような笑顔の女の子。
蝶のように美しい女の子。
誰よりも優しく誰よりも素敵な女の子。

でも本当はロボットの女の子。


「クロス王子様?こんな所でお昼寝ですか?」

濃い緑の匂いが、鼻を刺激する。
うっすらと目を開けば太陽の光と共に色素の薄い、長い髪が視界に入ってきた。
……眩しい。
こんな庭園の隅っこにも庭師の手は届いており、太陽の光を浴びて育った草花は僕の姿を見事に隠してくれる。
エスケープにはぴったりだ。

「君もおいで」

寝転んだまま目の前の女の子、シャリーにも昼寝を促す。
こんなに気持ちの良い昼なのだから寝なければ損だ。

「あの、でも、レイラさんに叱られてしまいます。それに王子様、今はお勉強の時間なのでは?」

全く、これだから。
確かに自分でも良い気なもんだと思う。
けれど勉強や執務に追われる毎日の中のちょっとした休息くらいは許して欲しい。

「そう言う君は?」

「私はお花達に水を…。それよりクロス王子様、こんな所に居る事を知られたら先生方に」

僕は彼女の言葉を遮り、自分の口許に人差し指を当ててシャリーを見やると、再び目を閉じた。
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