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□西の国のビルゴ
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遠い遠い、西の国に、ビルゴという無口な男がいました。

ビルゴは、三年前に、西の森で死にかけていたメスの仔犬を助けて、クコと名付けました。
家族は、それだけ。ビルゴには、人間の家族はいませんでした。
無口なビルゴは友達もできず、西の国を、クコといっしょにずっと旅して歩きました。
ビルゴはクコと以外はめったに話をしませんでしたが、射撃の腕は一流で、西の国でビルゴの名を知らないものはいませんでした。
「ねえ、ビルゴ。西の国は、もうあなたには狭すぎるわ。ほかの国へ行きましょう。」
クコは、ビルゴにそう言いましたが、ビルゴは、だまって首を横に振りました。
西の国は、ビルゴのふるさとです。生まれた場所を離れることは、不安で、さみしくもありました。
しかし、そんなビルゴの射撃の腕をねたんで、こっそりビルゴに怪我をさせてやろうとたくらんでいる者がいました。
「ビルゴ、覚悟!」
クコと話をして油断していたビルゴに、敵のナイフが突き刺さります。
「お前は何もしゃべらないくせに、有名になって、生意気だ!」
ビルゴは腰にかけてある銃に手をのばそうとしますが、腕に力が入りません。
敵は、ビルゴからナイフを引き抜くと、一目散に逃げて行きました。
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