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□愛の花
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彼の目からすべり落ちた涙は植木鉢の土を潤すとそこから芽を生やした。
芽はすくすくと大きくなり、やがて蕾をつけると花を咲かせた。
桃色の花だ。
愛の花というらしい。
なんて恥ずかしい名前なんだろうか。
しばらくすると、花の中に人が居ることに気付く。
だけど花の中に人が居るわけがないのだ。
目をこすり、もう一度見てみる。
やはり人だ。
花の中の人はこっちを見ている。
金髪の小さな人。
男か女かは分からない。
特別美しいとも思わないのだが、何故か目が離せなくなった。

愛の花の住人、名前はラブだ

彼はそんな事を平気で言ってのける。
恥ずかしすぎる。
愛の花?ラブ?
はっ。
嘲るように笑ってみせた。
しかし彼は大真面目のようだ。
ラブは眠そうな目でこっちを見ている。
可愛がってやれよ。
無責任な彼はそう言うと黙って消えていった。
おいおいちょっと待て、なぜそうなる。
狭い家の中で人間じゃない人と二人きり。
どうしようかと考えあぐねていると、花の中のラブは突然言葉を発した。

「愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。」



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