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□ハリド
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「神は僕をお救いになるだろうか」

隣に座り、机に向かって勉強中のはずである青年はふとこんな言葉を口にした。
青年…、クロス殿下は、成人なされて5年も経つというのに未だに妃殿下をお迎えになさらない。

「司祭の君なら解るかい、ハリド?」

唐突にそんな事を言われましても…。それに、今は勉強の時間ですよ、殿下。

そう言いそうになるのを堪え、肩まで伸ばした髪をかき上げると、言葉を選びながら申し上げる。

「僕には神の声は聞こえませんよ。何か救われたい事でもあるのですか?」

聞いてはならない事だったかと少し反省していると、殿下は意外にも自分の問いに答えた。

「どうだろうね」

曖昧に返事を返すと手に持ったペンをくるくる回しながら、彼は椅子に深く持たれかかった。
普段は礼儀正しく行儀の良い彼には珍しいスタイルだ。
いつもなら、幾分年上である自分よりも落ち着きがあり、後の国王になるに事足りない……むしろ、完璧過ぎる程高貴で美しい人なのに。



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