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□初夏の頃
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ちいちゃい蜉蝣みたいに、儚くお亡くなりになりましたとさ。

羽化した蝉みたいに、あっけない人生でしたとさ。


「鮭の一生を知ってる?孵化した後は海へ行くの。何年かそこで過ごして、産卵の時期になると生まれた川まで帰ろうと激流を上って行くのよ。そして卵を産み終えたら数日で死んじゃうんだって。

ねえ、私の言ってること、わかる?」







わかる?









心が悲鳴をあげている
しかし私は満たされて
白い
右腕にきつく口付け



溺れるのは幸せじゃない
掴むのは藁じゃない
その手を掴んだなら死ぬまで離さない。永遠は続くのだ。
目を見開いて最期の空を仰いだ。


「いつかの日にまた会いましょう」

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