テキスト
□あお
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6月の雨が降っていた。
君の部屋はクーラーも扇風機も無い。汗と雨の湿気で心なしか畳が少しばかり湿っているような気がする。
君は汗で前髪をおでこにはり付けて、手を団扇がわりに扇いだ。そんな薄着をしていると風邪をひくよ、とはなかなか言えない。
僕たちの関係は相変わらずで、友達でもなく恋人でもない。きっとこんな関係をこのまま一生続けるのだろう。
それでいいのだと思う。
僕たちにはそんな不安定さが良く似合う。
だけど僕らはときどき、お互いの孤独を抱きしめ合った。
どうしようもなく心が空っぽになった時は、どちらからともなく家を訪ねた。
僕と君は、同じ生き物なのだ。
「寂しいと死んでしまうのは兎ではなく、私たちだ」
そう言った君を思い出す夜は、いつもよりも長かった。
雨はまだ降り続いている。
君がその長い髪を口にひっかけているから、僕はそれに手をのばす。
そのまま、柔らかい君の頬にふれていたいと思った。
END
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