short-微甘

□君の隣り
1ページ/1ページ

 

 席替えなんて、憂鬱なだけ。
 一ヵ月単位で席替えを実行する私のクラスは、先月の今日が席替えだった。

 必然的に、今日が席替え。
 これが憂鬱の種。

 折角、五回目の席替えで野崎くんの隣りの席になれて、少しだけで会話ができるようになってきたのに。
 離れたら、前みたいにほとんど話せなくなる気がする。


 しかも、毎回席替えを仕切るのは野崎くん。
 いつも一ヶ月丁度に席替えを言い出すんだ。
 多分今日もそう……。


 一ヵ月なんて、早過ぎだよ。


「ねぇ、野崎くん」

「何?」

「席替えって、今日のいつ頃やるの?」


「えっと……あの。その……」


 いつもと違って、歯切れの悪い返答。


「したい?」

「へ?」

「菅野さんは席替えしたいの?」

「いや。今日で丁度一ヵ月だから、するのかな?って思っただけなんだけど。」


「俺、今回は席替えを率先する気無いから」

「そうなの?いつも野崎くんがやってるのに?」


「だって、五回目でやっと菅野さんの隣りの席になれたのに、一ヵ月でかえたくないもん」


 そう言うだけ言って、反対の方を向いてしまった野崎くん。
 けど、私から見える彼の耳は凄く赤くなっていて。

 それは、私の想いと同じだということを象徴していて……。


「しても良いと思うよ、席替え」

「……うわ。俺、今、振られてる訳?」


「だって授業中隣りじゃなくても、これからはずっと隣りにいられるから」


 それを聞いて、すごい勢いでこっちを向いた野崎くんのキラキラしてる顔を見ると、つられて私も笑顔になる。


 頬が赤く染まるのを感じながら。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ