short-微甘

□down to down
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 静かに、規則的に、リズミカルに。

 私と川島くんのそれぞれの傘に、空の雫が落ちてくる。


「この前ね、あの階段から落ちたのー」


 私達の進む前に現れたのは、私を落としたあの階段。
 あの日も今日と同じように雨が降ってた。
 滑った訳でもないのに、気付いたら落ちてた。
 いまだに、どうして落ちたのかは自分のことなのに分からない。


「すんごい軽く言ってるけどさ、大丈夫だったの?」

「うん。痣も、もうすっかり消えたから大丈夫」

「そっか。けど、今日は雨降ってて滑りやすいから気をつけなきゃ」

「うん。今回は落ちないように頑張るよ」


 久しぶりのこの階段。
 前に落ちてから、できる限り使うのを避けてて。

 けど、この階段が地下道に繋がってるから、雨から教科書が入った荷物をできる限り守るには使うしかない。


「今日は俺の後ろから階段降りてきな?」

「うん?」


「そしたら、上野さんが上から落ちてきたとしても少しは守ってあげられるでしょ?」

「ありがと」


「折角可愛い格好してるんだから、階段から落ちたりしたら台無しだよ?」



「……え?」


 慣れないことを言うから少し顔が赤くなってる川島くんが、いつもと違って可愛く見えて。

 赤くなってる顔を見てたら、ちょっとのことなのにドキドキが止まらなくて。
 言ってくれた言葉が嬉しくて。


 階段には落ちなかったけど、自分が恋に落ちた気がした。


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(雨の日注意)




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