short-微甘

□奇跡も必然
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 人生って、奇跡の連続で成り立ってるんだと思う。
 この高校を受験しようと思ったのも奇跡で、このクラスになれたことも奇跡。
 この前の席替えでこの席になったのも奇跡で、隣りの席が成瀬くんなのも奇跡。

 自分の隣りの席が、好きな人って言う、少女漫画で良くありがちなシチュエーション。
 本当、奇跡に感謝。



「なあ」

「何?」

 不意に私を呼ぶ声の主は成瀬くん。

「あのさ。本当にこの席になったの、奇跡だと思ってる?」

「……思ってるよ?」

「こんなに俺と澤口さんの周りには互いの友達もいないのに?」

「うん」

 私の答えを聞いて、何故か真剣な表情の成瀬くん。

「私、何か変なこと言った?」

「…いや。奇跡ってことは、言わば偶然ってことだよね?」

「そ…うだけど?」

「けどさ、それだと弱くない?」


「弱い?」

「そう。俺と澤口さんが折角隣りの席になれたのに、結び付きが弱い気がしない?」

「うん…?」

「俺はこんな席になることをずーっと願ってた訳よ。だから、偶然とは思えなくて。
んー。むしろ、必然?」

「……必然?」

「そう必然。
俺の澤口さんに対する想いが強かったから、俺の隣りが澤口さんなのは必然。
こうやって二人で話すのも必然。
そう思うのは、ダメ?」

「確かに、……そうも思えるね」

「だろ?」


「じゃ、じゃあ。今日も明日も明後日も、二人で一緒に帰るって言うのも必然で良いのかな?」

「もちろんだよ」

 キラキラした顔の成瀬くんの返事を聞いたら、自然と自分の顔が赤くなっていく。

 もしも二人の間に強い結び付きがあるなら、必然って考え方も良いのかもしれないって思えたんだ。




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