short-微甘
□one phrase
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「英語なんて嫌いだー!」
今手元にあるのは、返却されたばかりの英語のテスト。
「酷っ……。」
前の席からわざわざ後ろを振り返って覗き込む影。
一番見られたくなかった人に見られた。
密かに想いを寄せている人に、こんな点数を見られる程、恥ずかしいことは無い。
「見ないでよ!」
「いやいや。もう見ちゃったし。……それにしても酷いな。」
「そんな事言ったって……。英語なんてテストを作る方が悪いんだ!和訳なんて大嫌い!」
「仕方ないだろ。英語は避けて通れないんだよ。」
「だって……。私、外国に行く予定は無いから大丈夫だし!」
「でもな、岡田さん。」
一言つぶやいて、元の体勢に戻ったと思ったら、机の上からシャーペンを取って、私の答案用紙をひっくり返して何かを書き出した。
「もし俺がこう書いたら、岡田さんはしっかり意味を取らなきゃいけないんだよ。」
『one and only』
「うん。」
「意味分かってる?」
「『一度限りの』って意味でしょ?」
私の答えを聞くや否や、深い溜め息をつく高野くん。
「えっ、と。何か間違ってる?」
「間違っては無いけど間違ってる。」
「俺にとって岡田さんは『one and only』なの。……前後に合わせて訳してみ?」
「高野くんにとって、私は『一度限り』の?」
「訳せてないね。」
「……だよね。」
「じゃあ、岡田さんが訳せるようになったら感想聞かしてよ。」
そう言うと、自分の机に戻って自習を始めた高野くん。
最後に少しはにかみながら言った言葉が気になって、取り敢えず、電子辞書で片っ端から検索してみようと思った。
あなたからの言葉が知りたくて。