short-微甘
□Trick or You
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「はいっ!」
元気良く差し出された左手。
差し出してきた手には何も乗ってなくて……。
何がしたいのか全く意味が分からない。
なのに、理解できて無い私を見て何故かニコニコしてる下川くん。
「あの。下川くん。一体これは……?」
「Trick or Treat!」
「で?」
「ありゃ?もしかして訳せ無い?」
「いや、普通に分かるよ。それで、この手は何?」
「だから、お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ、ってことだよ?」
「あぁー。お菓子をねだられてる訳ね?」
「正解!」
「今日お菓子持って無いよ。だから、あげられるのは何も無いね」
「えー。持ってきててよー!」
「そんなこと言ったって、ハロウィンとかあんまり興味ないし」
「まぁ、良いや。お菓子くれないなら、田辺さんもらうからっ!」
それだけ言って、去っていった下川くん。
こんなこと、冗談でもさらりと言える人だったか?なんて思いながら見た彼の顔は予想以上に赤くなっていて……。
そんな彼の顔を見て、不覚にもドキッとしてしまった私がいた。