short-甘
□鬼はソト、福はウチ
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「豆まきの時にさ、『鬼はソト、福はウチ』って言うでしょ?」
腕の中におとなしくいた薫が、急にくるりと振り返り俺の顔を覗く。
何事かと思えば、相変わらず脈絡のない話。
きっと、昼間に観た豆まきの映像に影響されたんだろう。
言葉無く頷く俺を見て、話を続ける。
「けどさ、みんなの家から追い出された鬼はどこに行けば良いの?」
「……さぁ?」
「ねぇ、考えてる?」
「んー」
「しっかり考えてよー。もし私が鬼で、みんなの家から追い出されたら寂しいよー」
「そうだな」
「じゃあ、どこに行ったら良いんだと思う?」
「んー。ここに来たら良いんじゃない?」
そう言って、薫を包んでいた腕にさっきより少し力を入れて抱き締める。
「ここ?」
「そう。ここ。もし薫が鬼になってもここに来たら良い」
「けど、伸二が不幸になっちゃうかもよ?」
「ならないよ」
「……絶対?」
「ならない。薫が横にいたら、それだけで幸せだから」
そっか、なんて言いながら顔が真っ赤になっていく薫。
そんな君が側にるだけで、俺は幸せなんだ。
鬼はソト、福はウチ
(薫、顔赤過ぎ)
(だって、伸二が!///)