Cp.Novel
□アイズ
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ねぇ
貴方は、僕を見ていますか
その瞳に、ちゃんと映っていますか
アイズ
「──……ねぇ、ラビ」
世界中の情報を集めた紙切れに、埋もれ、荒れ果てた部屋。
それでいて、部屋主の印象からは考えられない程、生活感の無い。
そんな部屋の一部を占領する、白を基準とした飾り気の無い二段ベッド。
そこに横たわる彼へ、アレンはそっと声をかけた。
あお向けのまま動かないそれから返ってくるのは、気の抜けた呟き。
「…んあ?」
小さく、溜息を吐く。
「…聞いてましたか?僕の話」
「あ…悪ィ、ごめん」
時々思う。
彼が、…ラビが何を考えているのか‥それが、自分には良くわからないから。
仮にも、ブックマンの後継者。
子供みたいな仕種で、遊んでいるように見えて。
その頭の中には、僕には想像もつかないような難しいことが満ち溢れている。
彼にとって、アレンというこの僕の存在はいったいどんなものなんだろうか。
「んー…で、何だっけ?」
ベッド横に座りこんでいたアレンへ、上から声がかけられた。
髪の横を滑り落ちた手に一瞥をくれ、見上げれば、相手の顔がそれなりの間近にあって。
真っ赤な髪が、光に透ける。
「…良いですよ。特に大事な話でもありませんし」
はぐらかす。
別に、聞くのは今日じゃなくても良い。
ラビは、時々、とても遠くを見ている。
それは、窓の外だったり、水中の土だったり、紙の中だったり、鏡の中だったり、はたまた、誰かを通して、…など。
在るモノを通り越してしまう、その視線。
思考。
……ラビにとって、日常とは、あたかも推理小説のようなものなのだろう。
先の事態を予測し、作り上げた計画通りの言葉を述べる。
冷静に。
…あくまで、自分一人の考えにすぎないが、大方、間違ってはいないだろうな。
「んな事言うなよ。大事じゃない話なんて、無いんだからさ」
「…そう、ですか?」
信じられないの一言で片付く程、単純ではない感情。
片付けてしまえば、簡単な事情。
一緒に過ごせば過ごす程、解らなくなっていく双方の気持ち。
なのに、離れて過ごせばそれだけ深く考えてしまう。
かといって、明かすことは出来ないから。
それはまさに、大きなジレンマと近い境遇。
瞳を閉じ、開けば、にっこりと笑う彼。
微笑みを返し、アレンは再度、うつ向いた。
「その目は、僕を映していないんでしょうね」
呟いた言葉は、誰の耳に届くでも無く。
「アレン?」
「…ラビ、僕は…」
酔狂にも似た、小さな悦楽と悲哀を。
遠くもなく、近くもない、この場所で…
Fin