MEMORY

□BEER
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「うめぇなこのビール!」
一気に一缶飲み干して俺は口の回りを拭って言った。

「やっぱり空気が違うからね。」
早くも酔ったのか、シャルが満面の笑みでそう返す。

いや、こいつは酔ってなくてもいつでもこんな顔だ。

「やっぱ空気か?違いは。俺はビールの種類かと思ったんだけどよぉ。」
次々と缶を空け返事を返す。

「まぁそれもあるだろうね。流星街に廃棄されてくる賞味期限の切れたビールとは流石に違うんじゃないかい?」
マチが口を挟む。
こいつも何時になく饒舌だ。

「確かにそうだな。流星街にいた時はあんなビールでも口に出来たのが誇らしかったんだがな。」
フランクリンが目を細めて笑みを浮かべながら言った。

「そうね。でも外の世界にこんなにビールの種類があるなんて、本当想像以上だったわ。」
パクがマチと同じ、低カロリーでなんちゃらかんちゃらの女向けビールを嬉しそうに空ける。

「確かに、このビールの種類の豊富さを味わえるだけでも流星街出て来た甲斐があったよな。」
ノブナガが例に寄っていつもの高笑いをあげると。

「本当そうだぜ!俺ぁ世界中にあるビールを絶対全部飲んでやる!」
と、こちらも高笑いでウボーが返した。

「バカね。地ビールなんかを合わせたら世界中のビールなど数えられないね。」
フェイタンまでもが口を挟む。

みんながみんな、浮かれてこの時間を楽しんでいた。
そこへ。

「フッ」
と忍び笑いが洩れ聞こえる。

団長―クロロだ。
チクショウ、まだ言い慣れない。

メンバーの全員が団長を注視する。

「いいじゃないか。流星街で育った蜘蛛が、世界中を駆け回れる。…幻影旅団の名を世の中のやつらに刻み込んでやれ。」

とクロロが言った。

メンバー内にピリリとした空気が走り、尚且つ全員が好戦的な笑みを浮かべる。

「世界を又にかけ大暴れして、必ず帰り、証しの祝杯をあげればいい。」

今夜みたいに…とのクロロの台詞に、全員が強く頷いた。


幻影旅団の初仕事、初打ち上げの夜が更けていく。


明日も旨いビールを飲む為に。

止まらないで走り続ける蜘蛛の足である為に。


クロロの言葉を噛み締めて、俺は缶に浮いた水滴を拭いながら、今日の浮かれたメンバーの顔を頭ン中に焼き付けた。


20080723
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