BM小説

□踏み出せないあと一歩
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踏み出せないあと一歩


「なぁ藤丸」


呼びかけるといままでPCに向かっていた体をこちらにむきなおして見上げてくる
信頼しきった表情で、警戒心なんかまるでない態度で
だから俺もそれに付き合うんだ
ただの‘友達’‘親友’のフリをしていつもの表情で笑いかける


「好きの反対ってなんだか知ってるか??」


突然の俺の質問に案の定藤丸はわけが分からない、という表情を見せてくる


「はぁ??何言ってんだよ〜」


「好きの反対だよ?」


「……好きの反対は嫌いじゃねーの!!」


何を言っているんだという表情でそうぶっきらぼうに答えるとまたPCにむかって先ほど中断した作業をやり始めた。集中し始めた藤丸には俺のため息なんてもはや聞こえていない


「はぁ」


あいつが藤丸に必要以上の執着を見せるのは、本人はきっと嫌いだからとか2年前のことがあるからとか思っているかもしれない。後者は間違いないのかもしれないけど、今までのあいつの性格からして興味のないものは道端の石ころ以下の存在だと思っているはずだ。嫌いという感情すらわかないはず。だからその感情がどうであれ、藤丸に執着しているということは興味を持っているってこと


(好きの反対は嫌いじゃない…無関心だ)


あいつは藤丸に関心を持っている……


今はまだ利用価値のある相手としか思っていないかもしれないが、その関心がいつ変化するかなんてわからない
対極にあるものをひっくり返すのは難しいことかもしれないが、好きと嫌いはほんとに近い位置にあるものだから




だから





「危険だ」


今まで築いてきた‘親友’の地位。壊すにはもったいないほど暖かい場所だけれど、うかうかしていたら奪われてしまうかもしれない





絶対渡さない
あいつの隣は俺の場所だって昔から決まっていたんだ



 

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