BM小説

□繋がらない心
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藤丸に与えられた部屋からもれる小さな光
一見豪華な室内には窓もなく、内側から開けるためのノブもない
ここは彼を捕まえておくためのただの鳥籠
だって彼は自由だから、そうでもしないとすぐに大空に飛び立ってしまうから








「や、ん……もぅ……」


「くっ……」


どんなに体はつながっても心はつながらない
何度ここでこの体を抱いたのだろう


「あっ、あん……やっっーー……」


「っっふじ……まる………」


激しい突き上げに藤丸の背が緩やかな弧を描くようにしなる


あの日以来、毎晩抱かれ続けた体は開拓されつくしていた
どこが一番感じるのかすべて分かっている。藤丸のいいところだけを的確につき高みへと追い上げていく


この行為で彼に快感を与えることはできても笑顔を与えることは出来ない(前はくるくる変わった表情も今は快楽に歪んだ表情と悲しみをたたえた表情だけ)


「も…う、……だめっっっ、いっ、ちゃ……」


「っつーーー……」


二人同時に達したあとに残るのは、心にぽっかり空いた小さな穴
ひゅーひゅー音がして、どんどん広がっていく








君がほしかった


僕だけを見てほしかった


だから抱いた







でも違ったんだね


僕はただ君にそばにいてほしいだけだったんだ


体ではなく心が


いつのまにこんなに貪欲になってしまったんだろう


初めは君が横にいてくれるだけで幸せだった


僕を感じて、繋がっていてくれるだけで、


でも違ったんだ


そばにいるのに前よりもっと遠くに感じる


そばにさえいれば手に入ると思ってたのに(その全てが)


今まで僕が望んで手に入らないものなんてなかった
他人のものだってなんだって奪えばよかったんだから


でも


どんなに欲しくても手に入らないものがあるって始めて知ったんだ





君の泣いている顔も


笑っている顔も


全てが愛しいから


全てが虚しい







ねぇ、愛してるよ…藤丸














気を失う前に手を伸ばして君が触れた頬


「泣かないで……」


そういいながら優しく微笑んだ君にまた涙が溢れた


そうやって君は僕を捕らえ続けるから、離れられないんだ








世界なんていらない
ただ君がそばにいてくれるだけでいい
かみさま、もしいるのだったら
どうかたった一つの願いをかなえてください


 

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