心の本棚

□【願い事ひとつだけ】
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七月七日――今日は私の住んでいた日本では七夕の日。
神田に聞いたら「そんなのあったか?」なんて返されてしまったけれど
七夕はちゃんとある。

「千歳ちゃんの国には面白い行事があるんだねぇ!」

コムイさんに話したら、凄く感心されて…ちょっぴり嬉しかった。
それでかどうなのか、コムイさんはその日のうちに竹をたくさんドコからか持っ
てきて…。

七月七日の今日、急遽七夕が行われることになった。


「兄さんってばいつも急なんだから…」

「まぁまぁリナリー、楽しいからいいじゃない。えいっ」

「あ!?ちょ、ちょっと千歳…少しきつい…」

私はリナリーの腰紐をぎゅっと締めて、そのままきつく結んだ。

「大丈夫。これぐらいー」

「…ニホン人女性は大変ね」

「そうかな?」

後ろと前のおはしょりを合わせ、衿を合わせる。
そうしていつもやっている手順でリナリーに浴衣を着せてあげる。

うん、やっぱりリナリーは群青色がよく似合うと思う。

「できた、リナリー可愛い」

「お世辞はいいわよ。千歳の方が可愛いもの」

「またまた〜」

笑いながら2人でそういっていると、トントンとドアが叩かれた。
そうして程なくしてアレン君が顔をドアの隙間から顔を出す。

「千歳、着替え終わりましたー?」

「うん。アレン君は神田に手伝ってもらえたー?」

「それがね、酷いんですよ神田のやつ!
 『それぐらいできねぇのか。俺の国ではサルでも分かるぞ』とかいって…!」

「あはは、ユウったら相変わらずアレン君とは仲いいんだね」

「……よくないですよ…」

がっくりとアレン君はそう肩を落として言う。
神田がそんなにムキになるのは見たことないから、きっと仲がいいと思うんだけ
どな〜。

「ほら、千歳。アレン君も来たから二人でいってらっしゃいよ」

とん、とリナリーが私の肩を叩いてそう囁いた。

「私のことは気にしないで、兄さんと行くから」

「リナリー…ありがと」

リナリーの優しさに思わず頬がゆるゆるになった。
彼女の優しさにすごーく感謝しながら
アレン君の近くに近寄っていって、彼の手を取る。

初めて見る浴衣姿の――淡い青色で、とてもアレン君に似合っている――アレン
君はとても何だかドキドキした。

「千歳…似合いますね」

「そ、そうかな?アレン君も似合ってるよ、うんっ」

「あははは…ちゃんと着れてるかな?」

「だ、大丈夫。すごく、かわいい」

「………あ、ありがとう」

アレン君は少し顔をしかめてそういった。
…可憐だよ、の方がよかったかな。
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