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□ある兵士たちの日々
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ある兵士たちの日々

 
 彼の存在は、連邦政府としての一員とはまた別に、敵対する組織の一員であった。
 ミルチア紛争という戦禍が起こり、U-TIC機関は表立った活動ができなかった。
 オルムスという表面組織が社会的に認められているが、U-TICはそことは別組織として活動しているように見せなくてはならないという状況下である。
 ミルチア教主国という夢が崩壊してより、連邦政府の傀儡となった名だけは残した「第二ミルチア」。
 そこに帰る、いや手に取り戻すにはまだ時間がかかるだろう。何年かかろうとかまわないと、彼いや彼らは不屈とも言える信念の元に結集していた。

 が、前述のようにU-TIC機関は表立って活動ができない。
 連邦政府の一員となった彼の使命は重かった。何しろ、彼の手腕によってこれからの組織の維持がかかっているのだから。
 オルムスと別組織として活動をしなくてはならないということは、独自のルートの開発が必要だった。
 そこで、連邦政府内に潜り込み架空の会社を作り上げ、組織へ物資や情報を提供していかなくてはならない。
 
 表だって組織としての行動ができないのはやっかいだ、と彼は思っていた。
 それはそうだろう。勇名どころか、グノーシス現象の原因とまで拡大解釈されているU-TIC機関の存在が今もあり、活動していることが知れたら今度こそ連邦政府は組織ごと壊滅を狙ってくるかもしれない。
 極端な話、いまはU-TIC機関と密接な関係にあることを知られてはまずい連邦政府の議員や軍人もいるので、大々的なバックアップなど期待できない。
 維持するための資金、そして武装、食料。それらの手配を分担して行わなくてはならない。
 組織との通信も最小限にしなくてはならない。

 連邦政府にあり、U-TICにないもの。それは贅沢・浪費・風俗・大多数。
 こんな風にささやかれることにも「彼」は慣れた。

 U-TICを表立って支援ということはしていないが、幽霊会社を通じて搬入されてくる物資で組織は成り立っていた。
 オルムスという組織から大々的な支援がない今、組織の行動力の最大の源とする食料の確保。それが「彼」に架された使命だった。
 連邦政府の食料庫を襲うのも、組織としての存在意義が連邦政府内に蔓延している今はまずい。ならば、それを避けていかに安全かつ確実に組織に届けるか。
 そこに彼はU-TIC機関員としての使命のすべてを尽くしていた。

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