*忍たま 短編 Novel*
□愛してる、それ故に…
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「どうして…」
真っ赤な部屋の中。
紅く返り血を浴びた人影は,朱く染まってもう動かない彼を,身じろぎもせず見下ろしていた。
「なんで…なんでなの,仙蔵!!」
「あぁ,伊作か…」
僕が呼んで,ゆるゆると振り返り,こっちを向いた仙蔵は何故か嬉しそうだった。
「なんで…文次郎を……」
結われていた髪は地面に広がり,腹の大穴からは未だに血が流れている。
生気のない濁った目は,ただ,虚空を睨むだけ。
「なんでって……私の邪魔をするからだよ」
そう言って笑った。
綺麗な,綺麗な,紅い百合のような笑顔。
頬の血を袖で拭い近づいてきた仙蔵は,腰が抜けて動けない僕を,壊れ物を扱うかのようにそっと抱きしめた。
涙が溢れて止まらない。
「これでもう,邪魔をする奴はいないよ。いるなら葬ろう。2人だけの世界に……」
最後に彼は僕の耳元で優しく語りかけた。
「これでお前は私の物だ」
そこで僕の意識は途切れた。
end.