*空の彼方*
□序章
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拝啓,
顔も覚えていない父様,母様
お元気ですか。
僕は元気ではありません。
辛い毎日を過ごしています。
あなた達が僕を売ったサーカス団は潰れました。
僕が壊したから。
僕は今,山の中を歩いています。
あ,何か明るい光が見えます。
僕にはとても届かないけれど。
呪われたこの体には,闇が似合うんです。
僕が光に当たれば溶けて,消えてなくなるのでしょう
…痛ッ
盗賊でしょうか。
僕を後ろから切りつけました。
受身も取れずに倒れた僕の体を漁って苛々したように去っていきました。
それはそうでしょう。
僕は何も金目のものは持っていないのですから。
強く打ったせいか頭がボンヤリします。
ここで死ぬのでしょうか。
それはそれでかまわない気がします。
死んだら何処へ行くのでしょうね。
次に生まれ変わるときは,幸せな人生に。
せめて人並みの,温かい暮らしをください―――
序章、終.