*空の彼方*

□一章
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目を覚ますと,白い天井が見えた。


肩の傷にも包帯が綺麗に巻かれていて,汚れた服も着替えさせられていた。




「…ここはどこ…」



「あ,起きたかな。そろそろ包帯を替えようと思っていたところでね」


ベッドの周りに引かれていたカーテンの向こう側からおじさんが入ってきた。
あの子が言っていた,新野先生だろう。



「善法寺くん」


「はい」



ベッドの方に姿を見せたのは,僕と同い年くらいの男の子。



「この人の包帯を替えてもらえるかな。私は学園長先生にご報告してくるから」



「分かりました」



そう言って白衣のおじさんは善法寺…くんに包帯を渡すと部屋から出て行った。
















僕が新野先生に呼ばれてカーテンの中に入ると,彼はベッドの上に身を起こしていた。



開かれた瞳は,一つに結っているハニーブラウンの髪と同じ色だった。
めずらしい色だ。


「じゃぁ,包帯替えるね」



僕は彼に一声かけ,包帯を巻き取った。



彼の怪我は,刀で切りつけられた刀傷。10センチほどの傷が肩の肉を抉っている。

それも背中の方にかけて傷が深い。どうも後ろから切りつけられたようだ。


そんなことを考えていたら包帯は巻き終わったので,最後にキツく結び「終わったよ」と声をかけた。








「ありがとうございます」








誰が喋っているのかと思った。

あまりにも綺麗なアルトだったから。




確かに彼は華奢だ。中性的で,整った顔立ちでもある。

だけど女じゃない。今見たのは自分と同じ体だったのだ。





「あの,善法寺くん…」



「……あ,うん。何?」


呆然としていたら,返事が遅れてしまった。



「ここは,どこ?」



「忍術学園の保健室だよ。君は門の前に倒れてたんだ」



「忍術学園…」




「僕は保健委員長の善法寺伊作。君の名前は…」




「……鈴城彩です」




それから彼は数えで15だと言った。
僕らと同い年じゃないか。そんな子が何をしていたのだろう…


それを聞く前に彼が口を開いた。


「…何で僕は倒れていたんでしょうか。しかも切りつけられて…」


「…覚えてないの?」


「というか僕,誰ですか?」




「………………え……?」


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