*忍たま 短編 Dream*
□海の音が聞こえた。
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一年が経つ。15歳で時を止めた文次郎より、一つ年上になってしまった。
月日が流れるのは早い。
卒業を間近に控えた六年生が戦に出かけて行ったのを、昨日のことのように覚えている。
くのたまの私は、救護班の手伝いをしていた。そのとき――
「六年生の潮江文次郎先輩が火薬銃で撃たれた後行方不明だって!!」
そんな知らせと共に、一年は組の猪名寺乱太郎が飛び込んできた。
救護班のテントの中に衝撃が走り、どよめきや小さな悲鳴が上がった。知らせにきた乱太郎の顔も真っ青だった。
けれど、私の脳はその事実を受け入れることを拒否し、真っ白になった。
文次郎が撃たれて行方不明?
ナニヲイッテルンダイコノコハ。
そして周りの音が戻ってきたとき、遠くで叫び声が聞こえた。
どうやら敵が来たらしい。
怪我人がまた続々と運び込まれ我に帰った。
私は失神することも涙を流すことも出来ず、ただ黙々と手を動かした。
それが一年前の今日だ。
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