ネタ試し書きまとめ
□お供になった稲荷神
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A
あれから大変だった…
怪我は私の力で直ぐに癒えたが…心は簡単に癒えるものではない。
目覚めた鳴狐は同胞を探した。
隠しても仕方がないと事実を伝えれば叫び、喚き、咽び泣いた。
落ち着くまで言葉もなく傍に寄り添い、疲れて意識を失えばまた癒す…それを連日繰り返し鳴狐が事実を受け止める頃には私は“兄様”と呼ばれていた。
「兄様…誰かが来る…」
「……鳴狐、お前が此処を出る日も近そうだな。」
「え…」
「あの者達はお前と同じ付喪神よ…直にお前を見つけ連れ帰るだろう。」
「兄様は?」
「そうさなぁ…」
「寂しい…一緒に行こう?」
「確かに鳴狐が居らねば寂しいなぁ…行こうか。」
眉を下げ寂しそうにする鳴狐を撫でながら言えば、嬉しそうに目を細目擦り寄って来た。