02/23の日記
20:51
Scene4 猫舌
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ラルに太陽の光を浴びさせてやる為……
人間に慣れさせる為に、このアジトにラルを連れて来たと言う綱吉。
「うーん……それは分かるし、僕も勿論、協力はするけどさ…」
バイパーには、まだ不安材料が有る様だ。
「唯、ラルが此処の環境に慣れるのに、どれ位時間が掛かるか、だよね…」
「そうだな。初めての場所で不安だらけだろうし、頼れるのは、ツナとヴェルデだけだからな…」
早いうちに慣れてくれれば、問題は無いかもしれないが
長引いてしまったら、それがストレスになり、体調を崩してしまうかもしれない。
「バイパーに、そんな風に他人を思いやる心が有ったとは……お兄ちゃんは、感動しましたよ!」
「………馬鹿にしてるでしょ?」
にっこりと笑みを浮かべながら、自分の頭をグシャグシャに掻き乱すヴェルデを
バイパーは思い切り睨み付ける。
「それなら心配無いよ。俺だって、ラル自身の事を最優先に考えているんだよ?……それを踏まえた上で、ラルを此処に連れて来たんだ。」
綱吉には、ラルが直ぐに此処に馴染むと言う、強い確信が有る様だ。
「……ちょっと、着いて来てよ?」
綱吉はそれだけ言うと、さっさと先を歩いて行ってしまった。
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綱吉に案内され来たのは、食堂の前。(ちなみに、群れを嫌う雲雀は、自分のアジトに戻ってしまった。)
中から何やら楽し気な笑い声が聞こえてきて、一同首を傾げる。
綱吉は人差し指で唇を押さえながら、こっそり中を覗く様に指示する。
言われた通りに中を覗いて見ると
そこには女性陣が集まっており、お茶会が開かれていた。
「………熱っ!」
「はひ?ラルちゃんは、やっぱり猫舌なんですか?」
「おかわりは沢山有るから、ゆっくり飲んでも大丈夫だよ。」
カップを口から離し、舌を出しながら、しかめっ面をするラルに視線が集中する。
「……ぬるいのは嫌なんだよ…」
「あ…分かるな、それ。私も猫舌だけど、温かいのは温かいうちに食べた方が、美味しいから…」
「ラーメンとかは、伸びちゃいますもんね?」
「大変ね。猫舌って。」
そんなこんなで、女だけのお茶会はラルを中心に、大いに盛り上がっている。
その様子を、男達はポカンと眺めている。
「……言ったでしょ?あの娘は、人間の全部が全部を悪いと思ってる訳じゃないって。」
「ラルが恐怖心を抱いているのは、人間の男に対してだから………女の子達とは、直ぐに仲良くなれたんだよ。」
「……アイツ、あんな風に笑えるんだな、コラ…」
コロネロは、自分の手の引っ掻き傷を見つめながら、小さく呟く。
女の子達と楽しそうに会話にしている、その姿は
何処にでも居る、普通の少女と何の変わりは無い。
だからこそ、自分達に向けられる恐怖の表情が哀しくって、悔しくって仕方なかった。
彼女がそんな表情をする様になってしまったのは、自分と同じ生き物のせいなんだ、と。
そんなコロネロの肩を、綱吉がポンと叩く。
「今は…ラルの事は、彼女達に任せよ?」
「……あぁ。」
ラルは、笑顔を無くした訳では無い。
今は、それが分かっただけでも良しとしようと、コロネロは小さく、笑みを浮かべる。
何時かは、自分にも笑顔を向けてくれる様になると、信じて……
「取り敢えず……俺達は、今日の夕飯をどうするかを、考えようか?」
「「「あっ……」」」
食堂は女性陣が占領してる上、彼女達の盛り上がり具合からして
夕飯の事などは、頭の片隅にも無いだろう。
そう考えれば考える程に、余計に腹が減ってくる気がして
男達は、途方に暮れるのであった。
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