03/12の日記

22:17
Scene 9 嘘吐き
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ボンゴレアジト内では

盛大なるラル捕獲作戦が決行されている中



当の本人のラルは、雲雀のアジトの縁側で、のんびりと一眠りしている最中だ。





静かな雲雀邸は、本来ならば賑やかな場所を好まない猫には、居心地の良い場所で


ラルも度々、訪れる様になった。




来ては眠るだけのラルは、決して騒いだり

ましてや雲雀に纏わり付いたりは一切しないので




雲雀も特に咎めたりはせずに、ラルの好きにさせてやっている。




雲雀は雲雀。ラルはラルで

それぞれ、静かな一時を過ごしていたが





「恭弥?居るか〜?」





突然、明るく爽やかな声が静かな空気に響き渡ってくる。





「……何しに来たの?」
「んな露骨に、嫌そうな顔をすんなよ…」





中に入って来たのは、雲雀の家庭教師(?)のディーノ。





「ツナにちょっと用事が有ったんだけど、何か今は取り込み中みたいで忙しそうだったからさ。先にお前に挨拶しとこうかなっと思ってな!」
「別に、来なくって良いのに。」
「そう言うなって。………ん?お前、また新しいペットを飼い始めたのか?」





障子の隙間から、黒く長い尻尾がゆらゆらと揺れているのに気付いたディーノは


縁側へと足を運び、その姿を確認しようとする。





「猫…にしちゃ尻尾がデカイ気もするが……恭弥の新しいお友達は、どんなコかな〜?」





ひょいっ、と顔を覗かせ、その姿を確認したディーノは一瞬固まり


ゆっくりと、雲雀へ視線を戻す。





「お友達……じゃなくって彼女…?お前、猫耳萌えだったのか!?」





その瞬間、ディーノの頭にガツンとトンファーが直撃し





「にゃっ!?」






その衝撃音で、ラルは漸く目を覚ました。












「………あぁ〜、そうか!その娘が、例のツナが保護したって娘か!!」
「貴方には、そう珍しい生き物じゃ無いんだから、ジロジロと見ないの。」
「いや……どっちかって言うと、お前が珍しいなって思ってるんだけど…」





初対面のディーノを思い切り警戒しているラルは、取り敢えず


一応は、毎日顔を合わせている雲雀の背中に隠れ、様子を伺っているのだが



他人と群れる事を嫌う雲雀が

背中にピタっと密着されているのにも関わらず、大人しく壁になっていてやっている事に


ディーノは驚きを隠せずに居たのだ。





「ま。何だかんだで、恭弥は優しいからな!」
「……煩いよ、種馬。」
「跳ね馬だ!女の子の前で誤解を招く様な言い方をすんなよ!?」
「……跳ね馬…?」





その単語に反応したラルはゆっくりと、ディーノに視線を向ける。





「キャッバローネの?」





ずっとマフィアのアジトで生活をしているラルは


裏世界の事には、それなりに詳しいのだ。





「そうなんだよ!俺は、キャッバローネ10代目のディ…「嘘だ!」
「…………ハイ?」





自己紹介を終える前に、嘘吐き呼ばわりされてしまったディーノは


唯、瞳をパチクリさせている。





「な…何で、嘘なんでしょうか…?」
「キャッバローネの跳ね馬が、頭にそんなデカイたんこぶを作るハズがねーだろ!?」





ディーノの頭上を指差しながら、キッパリと言い切るラルに


雲雀は思わず、手で口元を覆い隠す。





「コラ!笑うな、恭弥!!誰のせいだと思ってるんだよ!?」
「……雲雀って、笑うのか?」
「君は、僕を何だと思ってるの?」
「だって何時もは、一言も喋らないじゃねーか?」
「それは、君が何時も寝ているからだろ?」





ラルの、ディーノへの不信が解けた訳では無いが


それでも場には、和やかな空気が流れ始める。





「おーっす!極限に邪魔すんぞ、雲雀!!」
「っ!?」





そこに更に、大きな熱い声が割り込んで来て



ラルの身体は、ビクッと強張り


雲雀は思い切り、しかめっ面を浮かべる。





「おぉ!本当に此処に居たのか、ラル?」
「く…来るな!!」
「……何事?」





中に入って来たのは、ラルを迎えに来た了平なのだが

敵意を剥き出しにし、了平を威嚇しているラルに


雲雀は首を傾げる。




コロネロの弟子で、京子の兄でも在る了平には

ラルも比較的、懐いているハズなのだが



今は一定の距離を保ったまま、全く寄り付こうとはしないのだ。





「ラルは予防接種を嫌がり極限に逃走中なのだ!」
「あー……だからボンゴレアジト内は、あんなにも大混乱していたんだな?猫の獣人を捕まえるのは、一筋縄じゃいかねーからな…」
「ふーん?」
「さ。帰るぞ、ラル!」
「嫌だ!!」





ラルは再び、逃走を謀ろとするが





「此処で騒いだら、二度と立入禁止だよ?」
「えっ!?……ふにゃっ!?」





雲雀のその一言に、ラルの動きはピタリと止まり


その隙に了平は、ラルを肩に担ぎ上げる。





「スマンな、雲雀。邪魔したな?」
「良いから、さっさと出て行ってよ。」
「あ、あの…雲雀…」
「何だい?」
「また……此処に来ても、良いか…?」
「好きにしなよ。」
「……ありがとう…」





雲雀の許可を得る事が出来て、ほっと一安心したラルは


そのまま大人しく、了平と共に、ボンゴレアジトへと戻った。













*********









医療室で、ウ゛ェルデの前に座らされているラルの身体は

カチコチに固まってしまっている。





「大丈夫だよ、ラル。目を閉じてれば恐くないからね…」
「あー!病院とかに、こんな親子って居るよな?」





そんなラルの瞳を、綱吉は手でそっと覆い隠してやり


周りではコロネロ達が、微笑ましく見守っているが





「そう固くならずにリラックスして下さい、ラル?大丈夫。唯、ちょ〜っと血管に針をプスリと刺すだけで痛くも痒くも無いですよ〜?」

「「「お前が、恐えーんだよ!!!!」」」





注射器を片手に、ニタリと黒い笑みを浮かべるウ゛ェルデに


一同、ツッコミを入れる。





「ラルは注射その物よりもウ゛ェルデが嫌で逃げ回っていたんじゃねーのか、コラ?」
「…今夜、夢に出て来たらどうしよ……」
「ラルは何故、ウ゛ェルデに懐いているんだ…?」
「はい。もう終わりましたよ、ラル。」
「……やっぱ、注射は恐い…」
「よしよし。良く頑張ったね、ラル?偉いよ!」





涙目で、綱吉に抱き着くラルに


ウ゛ェルデを除く全員が、深く同情するのであった。









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