ビバ☆青春

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鼻歌を歌いながら上機嫌に先頭を歩く沙奈。
後ろの七瀬と麗華もどこか嬉しそうだ。
三人は現在、四天宝寺に来ている。
青学、氷帝と二校の学校に行ったが、四天宝寺ではあんなに苦労しないであろう。
何故かというと…。



『すみません、渡邊先生。わざわざ案内してくださって…。』



「別に構わんよー。どうせ暇やったし、ピチピチの女学生の相手ならいくらでもしたるー。」



テニス部の顧問、渡邊オサムが案内役として居るからだ。
つまり、コートを探す必要も、教師に捕まることもないということ。



「あ、せや。せっかくやしテニス、やってみる?」



渡邊がふと思いついた様に言えば七瀬の顔がぱぁっと輝く。
キラキラと輝いている瞳は渡邊を見つめている。



『本当か!!?本当にいいのか!!?』



「あぁ、もちろんや!」



『うぉお!!!オサムちゃあん!!!』



七瀬は感激のあまり勢い良く渡邊に抱きつく。
その姿に麗華は微笑みを浮かべている。
沙奈も七瀬を見て笑みを浮かべた。



「それじゃあ、さっさと行くか!」



『おぉー!!!』
『おぉー!!!』



『ふふっ。』



元気の良い七瀬と沙奈に麗華が笑みを零した。








―…





『…うっわ…。』



濃い。濃すぎる。
コートについた三人はそう思っていた。
どの学校もレギュラー陣は凄く濃かったが、ここはとにかく全てが濃かった。



「はははっ!どや?濃いやろ、ウチの部員っ。」



アンタも濃いよ、と言おうとしたがとどまる三人。
豪快に笑う渡邊を苦笑いで見つめる。



「よっし!じゃあ集合!」



渡邊がそう言えば部員は、はいっ!と返事をして渡邊の前に整列した。
それと同時に渡邊の後ろの七瀬達に気付いた様で部員達は目線をちらちらと動かす。
渡邊は気付いていないのか、集合した部員を見回してニカッと笑った。



「よっしゃ、お前ら喜べー。神奈川からピチピチの女学生がきたでー。」



親父くさっ…。



部員達と七瀬達の考えがシンクロした。
そんなことも知らずに渡邊は話を続ける。



「そんでなー、見学ついでに一緒に練習参加させるからよろしゅうー。」



渡邊の言葉に部員達がざわつく。
それもそうだ。
素人の、しかも女学生が、全国レベルの部活に参加するなど有り得ない。
部員達はそんな視線で三人を見ている。
そして、一人の部員が前に出てきた。



「オサムちゃん、ちょっとえぇか?」



そう言って前に出てきたのは…。



『(白石蔵ノ介!!?)』
『(白石蔵ノ介!!?)』
『(白石蔵ノ介!!?)』



そう、部長の白石蔵ノ介。
聖書と呼ばれ、完璧で無駄のないテニスをする彼だ。



「オサムちゃん、俺らは確かに人を笑かしたりしてふざけてるようにしか見れんと思う。でも、本気でやってんねん。オサムちゃんなら分かるやろ?だから、突然きた初心者…しかも女学生の面倒を見る時間があんなら自分達の練習したいんや。だから、見学だけにしてもらうか、帰ってもらうか…。」



「………。」



白石の意見に先ほどまではおちゃらけていた渡邊だが、小さく息を吐いて帽子を深く被り直した。



「ま、そうやな…。」



溜め息をつくようにそう言う渡邊。
その後ろでは、一人が表情を引きつらせていた。
そう…麗華だ。



『ちょっと待ってくれません…?』



麗華が渡邊の前に出た。
七瀬と沙奈は麗華の突発的な行動に驚き目を見開く。 話をしていた渡邊と白石も驚きを見せる。
しかし、麗華はそんな周りの驚きを気にせず口を開く。



『確かにあなたの言うことは間違っていない。でも、さっきの発言…もっと言い方があったんじゃないですか?もし、私達が別の意味で…貶されたという意味で受け取ってしまったらどうするんですか?四天宝寺の品格が疑われるかもしれない、いろんな人を通して悪い噂がたつかもしれない、部長なら、もう少し意識しと発言するべきじゃないですか?』



「………。」



白石は黙ってしまった。
丁寧でいとハッキリとしている麗華の発言に説得力があったからだ。







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