SHORT

□夢ならば
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※病弱ヒロイン







『げほっ…っ…。』



表情を歪めて咳き込むその背中を仁王が優しく撫でる。

胸が苦しい。
喉が痛い。
頭も痛い。
意識がハッキリしない。

そう、いつもどおりの症状。
なのにいつもと全然違う。
きっと先生のあの言葉のせい。









―…もうあまり長くはない…―





―…もって一年だろう…―









余命を宣告されたとは思えない程意識がハッキリしていた。


一年後に…私は此処にいない…?


そんな筈ない。
今は苦しいけど、いつも症状が治まればすぐに笑っていられるんだ。

治まれば…治まれば…治まれば…。



『っっ!げほっ…げほっ…っ…、…。』



早く治まれ…!

そう思い必死に胸を押さえる。



「っ…沙柚希…無理はしなさんな。」



雅治が辛そうな表情で言った。
なんで…なんで雅治が辛そうなの?

苦しいのは私なのに…。
痛いのは私なのに…。
辛いのは私なのに…。



『まさはっ…る…。』



「なんじゃ…?」



『いま…なんじ…?』



唐突な質問。
こんな時に出る言葉じゃないだろう。
そう思いながらも仁王は平常を装って時計を見る。



「12時…15分…。」



『そっか…っ…。』

































じゃあさ、









すぐ終わるから、









一緒にお昼、食べようね。













「っ…あぁ…。」




苦しいのに、笑う。
痛いのに、笑う。
辛いのに、笑う。










あぁ…これが夢なら…







早く覚めてくれんかのぅ…。










end

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