SHORT

□さぼり
1ページ/1ページ







雲一つない青空がいっぱいに広がっている。
両腕を上げてグッと伸びれば、小さく息をつく。
そして後ろにいる彼の方を向いた。



『気持ちいいね、精市。』



顔を綻ばせながらそう言えば優しい笑みで帰ってきた。



「うん、そうだね…。」



『でも、まさか精市からさぼろうって言ってくるなんて夢にも思わなかったよ。』



そう言えば精市は困ったような笑みを浮かべた。



「俺だって授業なんかやってられない、て思う事もあるさ。」



精市の言葉にふーん、と軽い反応ですると地べたに座り込む。
すると、精市は私の隣に腰を落ち着かせた。
私は精市の肩に頭を預ければゆっくりと瞼を落とす。



『んー…こんなぽかぽかだと眠くなる…。』



思わずウトウトと眠りに落ちそうになりながら舌っ足らずにそう言うと、精市はクスクスと笑う。



「ふふ、いいよ。起こしてあげるから寝な?」



『…んーん…せっかくの精市とのさぼりだから…起きと、く…。』



のんびりした口調で言うも、言葉とは裏腹に意識がどんどん遠のいていく。
シャットアウトされる寸前に耳元でおやすみ、と囁かれたのを聞けばそこで意識が途切れた。
















『………ん…。』



瞼を少しだけ上げる。

今、何時だろう…。

そう思いながら欠伸をすれば隣からクスクスと笑い声が聞こえた。
視線だけ送れば精市の肩に頭を置いていたのに気付いた。



『………?』



「ふふ、ごめん。大きな欠伸だな、て。」



精市はそう言った。
寝ぼけた頭は言葉の意味がすぐに理解出来なかった。
しかし、少し考えれば頬に熱を感じた。



「かわいい。」



『嬉しくない。』



精市の言葉を否定すれば頭を起こしてそっぽを向いた。
まだ笑い声が聞こえる。
からかわれているだけ、そう分かっているから余計に恥ずかしい。



『…精市。』



「うん?」



ならば、私もからかってやる。



『大好き。』



「うん、俺も。」



あれ。

返ってきたのは期待していたものでなく、至って冷静な返事だった。



「…俺が一緒にさぼるのなんて…沙柚希くらいだよ。」



あぁ、頬の熱は引きそうにない。










[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ