omake

「来年は一緒に過ごしましょうね」
「そうですね」
「今年は寂しい思いさせちゃってごめんね」
「いえ、今年は7班の子供達に祝って貰いましたから寂しくありませんでした」
「えぇっ?!」

あ、あいつら〜〜ッ、俺のいない間にっ!!
「それはそうとカカシさん、サスケに何か言いました?」
ギクリッ
「な、何かって何?」
思い当たるコトが多すぎて答えられない…
こないだのイルカ先生の寝言の話?それともネコ耳させて怒られた事かなぁ…

イルカ先生は知らないけれど、実はサスケはナルトの事が好きだ。
その『好き』は、俺がイルカ先生を好きなのと同じ『好き』、で。
ナルトに対する態度があからさまに他と違うのでちょっと突いたら、あっさりと認めた。
まぁ、まだガキで愛情表現なんかまるで出来ていないが、お年頃なのか男同士の何とやらに興味があるらしく、二人の時に時々イルカ先生との事を聞いてくる。

俺も調子に乗ってイルカ先生の可愛らしさを力説したのがいけなかった。
まさかイルカ先生の耳に入るなんて…。

「…何露骨にビビッてんですか。白状したも同然ですよ」
先程までピンク色だった空気が一瞬にしてドス黒く変わる。
こっ、こんな時はサスケのせいにしようっ!それがいいっ!
「や、アイツ鋭くってねぇ〜。俺とイルカ先生が見詰め合ってたの見ちゃったらしくて、それにビビッときちゃったみたいなのね〜。ほらぁ、部下には嘘吐きたくないじゃない?でも大丈夫よ?アイツ案外口固いし、まだ誰にも話してないから。何なら忘却の術掛けてもイイですッ!!だから許してッ!!」
後半は半分泣き落としだ。
こんな事で不興を買って、別れるなんて言われたら…考えただけでも恐ろしいッ!!

イルカ先生が諦めた顔で溜息を吐くと、空気の緊張が解けた。
「もう言ってしまったものは仕方ないですしね…。でも、俺はともかくカカシさんは上忍師としてやりにくくありませんか?」
動かせる首を思い切り左右に振って、全く問題ない事を告げる。
「俺はサスケだけじゃなく里中の人間にイルカ先生との事知られたってイィんですっ!いや、むしろ知らせたいッ!!知らせるべきだッ!!」
「それは困ります」
「えぇ…えぇぇぇぇ〜っ!そんなキッパリと…」
ショック!すごくショック!!
イルカ先生は俺の恋人だって公言したいのに…イルカせんせ狙ってる奴の牽制にもなるし。

「なんで困るのっ?!タダでさえ先生モテるのにライバル増えちゃうじゃないッ!!」
「モテるのはアンタだろーがッ!!俺が何件くのいち達に貴方とのキューピッド役を断ったと思ってるんですかッ?!バレたら殺されますよッ!」
「は?キューピッド?何ソレ??」
俺を抱いている腕の力が強くなる。
「…チクショウ。言うつもりなかったのに…」
見えなくなってしまったイルカ先生の顔は、耳まで赤い。ぎゅうぎゅうと抱き締められてちょっと身体が痛いけど、今はそれどころじゃなかった。
「ねぇねぇ、何なの?俺そんなの知らないよ」
「…教えてないんですから知る訳ないでしょうが」
少し顔を上げてこちらを睨む。恨めしそうな瞳が可愛い、なんて言ったら間違いなく殴られるだろうな。
「…貴方を好きだと言うくのいち達からちょくちょく橋渡しを頼まれるんです。あんまり数が多いから最近は恋人がいるみたいだって言って断るんですけど…。その恋人は俺だなんて言える訳ないじゃないですか」
「そ、だったんだ…」
「大体アンタ、モテ過ぎなんですよ。俺が断ったのは両手両足じゃ全然足りません。…それにどうして恋人の俺が橋渡しなんかしなきゃなんないんです?!俺はライバルに協力するする程お人好しじゃありませんよ!あー思い出したら腹立ってきたっ!!」

思い出し怒りしてるイルカ先生を他所に、俺は幸せを噛み締めた。
だってそれって、それって…
「せんせ、それって独占欲?」
「どっ、どくせんよくーッ?!」
騒ぎ出すイルカ先生を無視して、もう一度動かない腕に力を込める。
「んもう、かわいーんだからぁ。誰に告られても俺の愛が揺らぐ訳ないでしょう?決めた!もうせんせが嫌な思いしなくて済む様に対策をとりまっす!!」
「頼むから何もしないで下さいッ!!ロクな事にならんのが目に見えてるっ!!」
「ダーメーもう決めちゃいました。さぁて明日に備えて寝よう寝よう♪イルカせんせ、愛してるッ!おやすみなさーいっ!!」
「やーめーてーくーれーッッ!!」


――数日後

「お前、あのはたけカカシと付き合ってるんだってなぁ。なんで今まで教えてくれなかったんだよ?」

これで一体何人に同じ事を言われるんだ…考えるだけで頭が痛い。
あれからというもの、カカシ先生のスキンシップは所構わず激しさを増す一方で。
くのいち達からの凄まじい殺気はビシバシ感じるものの、カカシさんが釘を刺しているのか詰め寄られる事はなかった。
ただ…

ガララッッ
「イルカせんせぇぇッ!!」
「あ、噂を…」
「ちょっとそこのアンタッ!!俺のイルカ先生に気安く触らないでよねっ!!」
始まった…

「この人は俺の大事な大事なコイビトなのっ!手ェ出したら殺すよ?」
「そっ、そんなつもりではっっ」
あぁぁ、済まないツルギ…不甲斐ない俺のせいで…
こうなったら最後の手段だ。何を言っても効かない大馬鹿野郎には、もうコレしかない。

「…カカシ先生…何度止めてくれと言ったら分かるんです…」
「だってイルカ先生!男は狼なんですよッ?!アナタは自分の可愛らしさをもっと自覚するべきだっ!!」
ゆらり
「こんの…バカカシがぁぁッッ!!これ以上俺や周りに迷惑掛ける気なら、今日限り俺と別れて頂きますっっ!!」
「別れるっ?!ヒィィィィィッッ!!それだけはッ!!それだけは絶対にイヤーーーッッッ!!!」



かくして、俺は平和な日常を取り戻したのであった。

end


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