Short◆S-H

□ヤキモチ
2ページ/2ページ


「…バカみたいだな、俺は」
「今更何言ってんだ? 三成」

さらりと障子を開けて入ってきたのは、この時分にいるはずのない情人。
「藤堂殿…何故…」
「ったく、あの嬢ちゃんに感謝しろよ」
仮にも藩主を使いに出すとは、流石は島左近の娘だよ。

「お前の様子がおかしいから見てこいってな」
どうでもいいことで悩んでるみたいだから話聞いてやれとまで言われたぞ。

笑いながら菓子に目を落とした高虎は、一つ摘んで口に入れた。

「あの嬢ちゃんとはな、まあ同盟結んだんだよ」
「同盟?」
「そ」
あっという間に食べ終えた高虎は、益々笑みを深めて三成に告げる。
「大事な“殿”に幸せになってもらおうってな」
だからよく話もするし、あれは人懐こいから名前でも呼ぶさ。

「だからヤキモチ焼くことなんざないんだよ」
「………!!」

羞恥で瞬時に赤くなるのを止められず、三成は顔を伏せた。
それを許さず顎を掬い上げ、軽く口付ける。
「まあ俺としちゃ、お前のヤキモチは大歓迎だがな」
「ちっ、違いますっ」

藤堂殿、と抗議する三成の腕を押さえ込んで、高虎は囁いた。
「いいっていいって。…だからな、三成」

いい加減、閨以外でも名前で呼んでくれないかね。

その艶めいた声と言葉の意味に、三成は益々赤くなった。
「嬢ちゃんだって痴話喧嘩に巻き込まれたくなかろうよ」
楽しそうに覗き込む情人にため息ひとつ吐いて、三成は身体の力を抜いた。


「…考えておきます、高虎殿」


初めて陽の高いうちに名を呼んで、三成は情人の背に手を回した。





************
単に「高虎の名を気安く呼べるたまきにヤキモチを焼く三成」が書きたかっただけなんですが…あれー?
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ