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□嘘の日
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酒肴を揃えて、三成は待っていた。彼なりの詫びの気持ちなのだろう。

「酒精の力を借りなけりゃ言えないってか?」
声に出さず笑えば、勢いよくかぶりを振る。
「違います! 俺はそんなつもりじゃ…」
「分かってるよ」
身を乗り出す彼を制し、酒を注ぐ。
「冗談だ。まだ嘘を言っても良い時分だろう」
くつくつと笑いながら杯を干す。三成は分が悪いものだから何も言えず、黙って高虎に酒を注いだ。
「お前は飲まないのか?」
「…酒の所爲にはしたくありませんから」
膨れながらも顔は赤い。それが愛しくて、高虎は三成を引き寄せた。

「もう深更まで待たなくても良いや。聞かせてもらおうか、三成」

お前の本心を、今、ここで。

三成は一度震えて、高虎から静かに身を離した。
居ずまいを正して、深く息をする。
そうして真直ぐ高虎を見つめ、ゆっくりと告げた。


「貴方が好きです。お慕いしています、高虎殿」


貴方だけですと小さく加えて、恥ずかしさに俯いた情人は、うなじまで赤く染め上げていた。


「……参ったね、俺の負けだ」
「え…」
「ここまで浮かれるもんだとは思わなかった」

言葉に、仕草に、可笑しいほどに煽られた。
いつも向けられる笑顔で、闇に交わす熱で、この情人が己を好いていると分かっていたはずだ。それが自惚れではないことも分かっている。
だが、言の葉に形づけられると恐ろしいほどの破壊力をもたらすのだと、高虎は今更のように思い知った。これまで権謀術策を弄し、それこそ言葉を巧みに操って敵も味方も転がしてきたのに。

「お前にゃ敵わねぇよ、三成」

改めて引き寄せた身体はぴたりと腕の中に納まった。真っ赤な顔のまま、けれど不思議そうに見上げる情人に、高虎もまた告げる。

「俺もお前に惚れ込んじまってるよ、どうしようもなく、な」

今日は無茶させそうだが許してくれよと囁いて、高虎は情人に喰らいついた。





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いやこっちがこっ恥ずかしいですわ!改めて告白ってホント恥ずかしい…。
実はこの後のお色気シーンを書きたいがために続き書いたのですが、何か自分の中で収まり良かったのでこれにて終了です。続きは妄想力妄想力!
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