Short◆Others
□修羅の願い
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「斎藤」
宵闇の桜の下、彼の人は振り向かずに己を呼んだ。
「何ですか?」
「お前の願いは何だ」
「唐突ですね、いつものことながら」
願いがあるかないか、まず聞くべきはそちらではないかとも思ったのだが、その疑問がまず唐突だから考えても詮無いことだ。
二人歩く前の闇に、濃密な気配。
殺気を隠せぬならば、二流。
わざとならば、自信過剰。
どちらにせよ、彼らの刻は止まるのだ。
つらつらとどうでも良い問答をする我々の手によって。
「良いから答えろ、斎藤」
お前の願いを。
「そうーーですねぇ」
考える振りをして立ち止まる。土方もひたりと歩みを止め、それに掛かった獲物が飛び出してきた。
素早く土方の前に回り込み、最初の一人を斬り伏せて、彼の人ににこりと笑んだ。
「貴方の死に様を、見せてください」
それが私の、ただ一つの願い。