Get&Gift

□【Gift】夢なら覚めて
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「…8度6分」

 今これってことは、昨日あたり9度超えてたねきっと。
「いつから具合悪かったの?」
「えーと、昨日の」
「敬」
 じろりと睨む恋人の視線を避け、佐久間はバツが悪そうに笑う。
「…一昨日の夕方くらい…かなぁ」
「そんなっ…」
「いつもはお粥食べて薬飲んでポカリ飲んであったかくして寝てれば治ってたんだよ」
 今回の風邪はツワモノだったんだねえと嘯く頬に手が添えられ、佳主馬のほうを向かせられた。

「…何で、呼んでくれなかったの?」
 その時呼んでくれてたらここまで酷くならなかったはずなのに。
「…俺じゃ頼りにならない?  それならせめて健二さんとか」
 本当は自分以外の誰にも看病させたくなどないけれど、というのが顔いっぱいに書かれていて、佐久間は不謹慎と思いつつ笑みを零してしまった。
「違うよ。せっかくの里帰りを邪魔しちゃ悪いかなーって」
 そこでようやく、佳主馬の顔が近いことに気づく。こちらは病人だ。風邪を移してしまっては申し訳ない。
 あんまりくっつくと移るからと、手を放させようと引っ張った。しかし佳主馬の手はひたりと貼りついて離れない。
 ダメだと分かっているのに嬉しくて、まあいいか、てのひらが気持ちいいし、と言い訳してしまうのを熱に浮かされたせいにした。

「…何笑ってんの」
「ん?  てのひらがちょっとひんやりしてて気持ちいいなーって」
「俺、怒ってるんだけど」
「何で?」
「敬が呼んでくれなかったから!」
 上機嫌の佐久間とは逆に、佳主馬の機嫌は悪くなるばかりだ。
 けれど、本当は怒っていないと知っている。これは自分自身を責めているのだ。
 辛そうな表情の恋人に、佐久間は素直に謝った。
「ごめん…心配かけた」
「帰ってきたら倒れてて…声かけても起きないし…」
 死んじゃったらどうしようって、救急車呼ばなきゃって、心臓止まるかと思った。

 大袈裟な、と笑うことなどできなかった。

 その言葉に嘘も偽りも誇張もないと、分かったから。

「佳主馬」
 呼び掛けて、頬に小さなキスをした。

「…敬」
 心配かけてゴメン。ちゃんと治すし、次はすぐに呼ぶから。

「だから看病よろしくね」

 にこりと笑って、布団に潜り込む。
 外された眼鏡を受け取り、佳主馬は恋人の額にキスを返した。



「任せといて。最高の看病をしてあげるから」
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