Short◆S-H

□別離
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「…帰ったのか」
「ああ…ったく、どこで嗅ぎ付けてきたのやら」

つい先刻まで高虎が対していたのはかつての敵大将・石田三成。
どこから聞きつけたのか、関ヶ原で討死したはずの親友が生きており、しかも藤堂高虎に「捕らわれて」いると言って身柄の引き渡しを求めて来たのだ。
あくまで噂、大谷吉継は我が策で確かに討ち取ったと言っても聞かず、ようやく納得させるのにかなりの時間を要したのだ。
それはもう、頭上にあった陽が地平間際へと傾くほどに。

疲労困憊といった風情で深いため息を吐いて座る高虎に、吉継は労いの言葉をかけた。

「あれを説得するのは疲れたろう…済まなかった」
「何を今更」
三成は確かにバカだが理が通らぬ馬鹿ではない。
「ただ…扇子をやっちまったのがなあ…」
終わらぬ押し問答にケリをつけるべく、高虎は吉継の「形見」を三成に取らせ、ようやく帰すことができたのだ。
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