Short◆S-H

□天下御免
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「家康殿、お願いがございます」
「高虎か、どうした」

天下人となった家康に憶することなく近づくことを許される数少ない一人・藤堂高虎。
策士として名高い彼の頼みは、正しく家康の度肝を抜いた――その理由も含めて。


「もう一度、天眼をご披露頂きたいのです」

家康は、文字通り茶を噴いた。

「…高虎よ」
「は」
「あれが儂の身体にどれ程の負担を強いるか分かっておろうな」
「勿論ですとも。ですからただ一度、とお願いしているのです」

ニヤニヤと笑いを浮かべながら決して退こうとしない高虎にため息を吐いて、家康は嫌々ながら話を続けた。
「して、誰を、何処へ追えばよいのだ」

待ってましたとばかりに膝を進めた高虎は、ますます笑みを深めて言上した。

「現在堺に潜む石田三成を、我が領地へ」

「………高虎」
「はい」
「そちの領地といえば」
「伊予、ですね」
ありがたいことにご加増頂きましたと嘯く。

「………儂を殺す気かああぁぁっ」

地を揺るがさんばかりの大音声もどこ吹く風と、高虎は澄まし顔だ。
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