Short◆Others

□修羅の願い
1ページ/2ページ


「斎藤」

宵闇の桜の下、彼の人は振り向かずに己を呼んだ。

「何ですか?」

「お前の願いは何だ」

「唐突ですね、いつものことながら」

願いがあるかないか、まず聞くべきはそちらではないかとも思ったのだが、その疑問がまず唐突だから考えても詮無いことだ。

二人歩く前の闇に、濃密な気配。
殺気を隠せぬならば、二流。
わざとならば、自信過剰。
どちらにせよ、彼らの刻は止まるのだ。

つらつらとどうでも良い問答をする我々の手によって。

「良いから答えろ、斎藤」

お前の願いを。

「そうーーですねぇ」

考える振りをして立ち止まる。土方もひたりと歩みを止め、それに掛かった獲物が飛び出してきた。


素早く土方の前に回り込み、最初の一人を斬り伏せて、彼の人ににこりと笑んだ。


「貴方の死に様を、見せてください」



それが私の、ただ一つの願い。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ