Short◆SmW
□アバターの謎
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「そういえば、理一さんのアバターって不思議ですよね」
地球外生命体、みたいな。でものほほんとしてるし。でも頭にレーダーついてるし。
健二の素朴な(でももっともな)疑問に答えたのは、姉の理香だった。
「アレね、アタシが作ったの」
「理香さんが…ですか?」
そんなシュールな絵を描くようには見えないが、人は見掛けによらないのだろう。
しかし、健二の推測はあっさりと否定された。
「あ、デザインはもちろん理一よ。もっとも、子どもの頃の、だけど」
何か幼稚園とか小学校とかで絵描くじゃない? 理一が見た夢に出てきたらしいのよね。
「地球を侵略しにきたけど仲良くなっちゃった宇宙人、だっけ?」
「よく覚えてるよなあ、そんな昔のこと」
「だっておばあちゃんも出て来たって朝ご飯のとき言ってたじゃない」
そんときのおばあちゃんが傑作でさあ、アンタ、その宇宙人と仲良くなることで地球を守ったんじゃないか。エライって。
「それで自衛隊だもんねー」
単純単純と笑う姉に、理一はただ苦笑している。
「元々姉ちゃんのアバターを俺が勝手に設定しちゃってね」
確か同じ箱に入ってたんだよね。姉ちゃん餃子大好きだから。
「それで設定して《勝手に変えたらコロス》って言われちゃねえ」
変えるわけにはいかないんだよ、弟としてはね、という理一の言葉に、何故か太助が力強く頷いた。
「お母さんのも同じ箱からだったわよね」
何か母の日のプレゼントじゃなかったかしら。そう呟く理香に理一も頷く。
「確か侘助に表情が変わるように設定して貰ったんだよなあ」
それで万理子の機嫌をリサーチしてたらしい。いつの間にか機能は使えなくなっていたが。
「だからアンタたち、私の機嫌が悪い時は大人しかったのね」
知らなかったわと呆れる顔に、食卓のみんなが笑う。
「健二君も作ってあげようか?」
ニコニコ笑う理一に、周りが賛同する。
「おお、いいなあ。イカはどうだ?」
「父さんと被るでしょ、ダメ」
「じゃあウサギは? 佳主馬くんとおそろいで」
「キング・カズマファンを敵に回したくはないでしょ」
「じゃあ夏希とおそろいは?」
「絶対許さ―――ん!!」
賑やかな食卓に、健二の穏やかな声が通った。
「僕は…今のがいいです」
皆さんに覚えてもらったし、と恥かしそうに俯く健二を、皆が優しく見守る。
「…ま、前のは世界中で有名になっちゃったからね」
佳主馬の呟きに、一斉に声をあげて笑う。
「確かにな!」
「それ言ったら夏希のもじゃない」
「いや今のイイわよ癒し系で」
「佐久間君だっけ? 良いセンスしてるよ」
「良くわかってるお友達ね」
賑やかなその温かさに、健二もまた嬉しそうに笑んだ。
「…さ、いい加減食べちゃって、片付け始めましょ」
万理子の鶴の一声に、慌ただしい食事が再開された。
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理一アバターの話が家族の食卓話に…でもこんなカンジだといいな。
そしてすみません佐久間を名前だけでも登場させたくて追加しましたー。誰が何を言ってるかはご想像にお任せで〜(書き分けろ)。