Short◆Brst

□第2ボタン ミヤカツside
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「あの…宮原先輩。ボタン…頂けませんか?」
「え? 僕?」
「はい! …ダメ…ですか? やっぱり」
「いいけど…」
 そう言って4番目のボタンを取って渡す。いちばん下のボタンはもうなくなっていた。
「ありがとうございます! …やっぱり、第2ボタンはあげる人がいるんですね」
「うん。ごめんね」

「いや〜サスガにモテるね、宮原先輩は」
「……!! 見てたの小村!?」
「たまたまだよね、カッちゃん」
「三谷! お前まで!」

 今日は中学校の卒業式。女の子たちが最後の勇気を振り絞る日でもある。
 卒業する生徒たちにしても、中学までは一緒だった友人と高校で分かれることが多い。だから学校内には名残惜しさが満ちていた。
「はーい、じゃあココでオトコ同士寂しくこうか〜ん」
 おどけた調子で小村が言う。3人は卒業記念にボタンを交換すると約束していたのだ。
「あ、もうこんな時間。ごめん、僕もう行かなきゃ」
 三谷は学校の違う芦川と会う約束をしていた。自分と小村を拝むようにして謝る。
「いいっていいって。まだ春休みがあるんだし」
「芦川によろしくな。…あ、そうだ。小村」
「ん? あ、そっか」
「何? どうしたの二人して」
 二人はそれぞれボタンを取ると亘に手渡した。
「これ、芦川に。卒業記念って」
「ミツルに? いいの?」
「いいのいいの。ま、オトコに貰っても嬉しくないだろうけどな」
「そんなことないよ! 絶対喜ぶよ! ありがとう!!」
 またね、と言って嬉しそうに亘は駆けていった。
「あーあ、ホント芦川大好きだな、亘は」
 小村が呆れたように笑う。
「…意味分かっていってるの?」
「へ? 何か言ったか?」
 小村は分かってない。三谷の芦川に対する「大好き」がどんな意味を持っているのか。
 そして僕の小村に対する気持ちも−−。
「そんじゃ、オレもそろそろ帰っかな」
 気のせいか、殊更明るい口調で小村が言った。
「え? どうして? 一緒に帰ろうよ」
「何言ってんだよ。ボタン渡さなきゃならないんだろ?」
 宮原の胸にただ1つ残る、第2ボタンを指さして、小村は言った。
「学年一の優等生、宮原祐太郎クンが誰にボタンをあげるのか気にはなるけど、そんなヤボなマネはしないって」
 やっぱり分かってない。そうだろうとは思っていたけど、改めて悲しくなる。
「……小村、ちょっと来てくれるかな」
「え? おい、どうした宮原」
 驚く小村の手を引いて歩き出した。
 これから自分は振られるために告白しなければならない。
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