Short◆Brst

□進路相談
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「亘、宮原が近所の公立高校行くってホントか?」
「うん、まだ決めたわけじゃないんだろうけど」
「お前や芦川と同じH高行くんじゃないの?」
「うーん…宮原なら推薦取れるんだけどね。っていうか、先生が推薦で行かせようと説得してる」
「だよなー。普通そっち選ぶよな。何でだろ? 理由聞いてるか?」
「……聞いてるというか何というか……」
「何だよはっきりしろよー」
「宮原に直接聞いたほうがいいと思うよ。…本当に気になるなら」
 むしろ聞いてあげてほしい。そして気づいてほしい。更に言えば応えてあげてほしい。
 言葉にできない思いを押し込めて、亘は言った。
「そうだなー。聞いてみっか」
 亘の思いを知ってか知らずか、小村は宮原に声をかけに行った。

++++++++++

「宮原、近所のJ高行くってホントか?」
「うん、そのつもりだけど…何で?」
 珍しく小村から一緒に帰ろうと誘われたから何かと思ったら、進路のことだったのかと宮原は意外な気持ちになった(嬉しかったからいいけど)。
「だって、お前なら亘や芦川と同じトコ余裕で行けるじゃん。つーか推薦で行かそうと先生が説得してるって聞いた」
「ネタ元は三谷か」
「いや、ほかからもちらほら聞いた。オレに理由を聞かれたこともあるよ。オレに聞かれても知らないのになー」
 クラスが違うのに一緒にいることが多いから、仲がいいと思われてるのだろう。実際いいんだけど。
「そういう小村は商業高校でしょ?」
「そーそー、オレ勉強嫌いだし。でも店継ぎたいからそのためには商業は行っといたほうがいいからさ」
「…考えてるんだな」
「あ、バカにしたろ」
「してないよ! 凄いな、小村は」
 本心からの言葉だ。言われた小村は照れて心なしか赤くなっている。
「それに比べると僕の動機は不純だよな…」
「え? 何? 何なの?? まさか好きな子がその高校行くとか?」
 天然はこれだから困る。ため息をつきたくなるのを抑えて、宮原は曖昧な説明をする。
「違うよ。…近所だから」
 近くなら、学校が違ってても君に会える確率は高いから。心の中で呟いた。
「なんでぇ、もったいねーの」
「そうかな」
「そりゃそうだろ。宮原ならどこだって行けるじゃん。亘や芦川も一緒だと楽しいだろうし、あっちに変えたらどうだ?」
「…小村はいないじゃない」
「オレは無理無理。ってオレ関係ねーじゃん」
 ぐさりときた。今のはかなり手痛い。
「関係なくないよ。僕は…」
 進路すらどうでも良くなるほど、君の側にいたいのに。
「大体、学校違ったくらいで離れちゃうような薄っぺらい関係なワケ? オレたち」
「え……?」
 何か今嬉しいこと言われた?
「せっかくだからがんばれよ、宮原。オレの友達が3人もH高行くなんてめっちゃ自慢だもんよ」
 そんで将来ウチの常連になってくれれば言うことなし。そう続けて小村は笑った。
「うん…そうだね…そうしようかな…」
 小村に悪気はない。ないから余計始末に負えない。
 そうだ。このまま近所で顔を合わせるより、いっそ離れた方が諦めもつく。
 友達として、いずれ疎遠になるのなら、その方がいいのだろう。
 ケリをつけよう、そう決めた。
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