Short◆Brst

□Night of honey milk
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「…眠れないの?」

隣りで寝息を立てていたはずの亘に声をかけられて、美鶴は思わず身を竦ませた。

「ああ…悪い。起しちまったか」
「ううん、実は僕も…」
「嘘つけ。さっきまでイビキかいてたぞ」
「ウソッ、ゴメン!」
「嘘だよ」
はは、と軽く笑うと、隣でむくれた声がした。
「ヒドイよ〜僕のせいかと思った」
「悪かったよ。むしろお前のお陰で…」

そう。亘が隣にいてくれるから、悪夢も見なくなった。

それなのに今度は、亘が去って行く夢を見る。
怖い、なんて生易しいものではない。指先から血の気が引いて頭の奥まで冷たくなって、轟々と耳鳴りがするのだ。しかもただの夢だと、夢の中の自分は分かっているのに身体の震えが止められないのだ。

夢でさえ、あれだけの恐怖に慄くのだ。これが現実になったら――。

「大丈夫だよ」

ふわりと、温もりが身体を包む。

何も言わないのに、亘には分かるのだろうか。そのとき一番欲しい言葉をくれる。

「ちょっと待ってて」

小さくキスを落とすと、亘は台所へ向かった。
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