Short◆BSR

□花咲く季節
1ページ/2ページ


「しつこい男は嫌われるんだって〜」
俺様またフられちゃったのよと嘘泣きしながら、佐助は小十郎に凭れかかった。
「うるせぇ、黙ってろ」
何の書状か分からぬが、手を離すつもりはないらしい。
邪魔すると後が大変なので大人しく引き下がるが、それでもため息を止めるつもりはこちらもないようだ。

「いい加減くの一をからかうのは止せ」
本当に嫌われたらどうするんだと窘めれば、佐助はまたため息を吐いた。

「たまには遊んでくれてもいいと思うんだよね〜」
「たまには、ならな」
毎度毎度じゃあ、あのくの一もうんざりだろうと、更に傷を抉る。

「…小十郎さんも?」
「何がだ」
「しつこいのは嫌?」
「…………」
「ああやっぱり嫌なんだー」
もうダメ小十郎さんに嫌われたら俺様生きていられない〜と情けない声で転がり回る情人に、小十郎はうんざりとしたため息を吐いた。

「佐助」
「何? …」

言葉尻は吸い取られた。

「情けねぇ声出してんじゃねぇぞ」
ったく、と舌打ちひとつして、突然の口付けに茫然とする佐助の頭をはたいた。

「っ痛っ」
「俺は自慢じゃねぇが他人の情に疎い」
「竜の旦那以外はね」
またはたかれて佐助は呻く。
「それをテメェがしつこくしつこく口説いたんだろうがよ」
そうでもなけりゃこんな事になるか阿呆、ともう一度はたこうとする小十郎の手を、佐助が捕らえた。満面の笑みで。

「…今すっごい惚気聞いちゃった」
小十郎はそっぽを向くが首まで赤いのが分かる。
「あ〜愛されてる実感沸いた〜」
「なら離れろ」
嫌だよ、と捕らえた手を引き寄せる。

「今度は俺様が実感させてあげるよ」

ね、と益々笑んで、佐助は小十郎を抱き締めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ