Short◆BSR
□花咲く季節
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「しつこい男は嫌われるんだって〜」
俺様またフられちゃったのよと嘘泣きしながら、佐助は小十郎に凭れかかった。
「うるせぇ、黙ってろ」
何の書状か分からぬが、手を離すつもりはないらしい。
邪魔すると後が大変なので大人しく引き下がるが、それでもため息を止めるつもりはこちらもないようだ。
「いい加減くの一をからかうのは止せ」
本当に嫌われたらどうするんだと窘めれば、佐助はまたため息を吐いた。
「たまには遊んでくれてもいいと思うんだよね〜」
「たまには、ならな」
毎度毎度じゃあ、あのくの一もうんざりだろうと、更に傷を抉る。
「…小十郎さんも?」
「何がだ」
「しつこいのは嫌?」
「…………」
「ああやっぱり嫌なんだー」
もうダメ小十郎さんに嫌われたら俺様生きていられない〜と情けない声で転がり回る情人に、小十郎はうんざりとしたため息を吐いた。
「佐助」
「何? …」
言葉尻は吸い取られた。
「情けねぇ声出してんじゃねぇぞ」
ったく、と舌打ちひとつして、突然の口付けに茫然とする佐助の頭をはたいた。
「っ痛っ」
「俺は自慢じゃねぇが他人の情に疎い」
「竜の旦那以外はね」
またはたかれて佐助は呻く。
「それをテメェがしつこくしつこく口説いたんだろうがよ」
そうでもなけりゃこんな事になるか阿呆、ともう一度はたこうとする小十郎の手を、佐助が捕らえた。満面の笑みで。
「…今すっごい惚気聞いちゃった」
小十郎はそっぽを向くが首まで赤いのが分かる。
「あ〜愛されてる実感沸いた〜」
「なら離れろ」
嫌だよ、と捕らえた手を引き寄せる。
「今度は俺様が実感させてあげるよ」
ね、と益々笑んで、佐助は小十郎を抱き締めた。