Get&Gift

□【Get】紅林ひさご様よりリサク小説2
1ページ/6ページ

 情報管理における最大のリスクはヒューマンエラーだ。
 どれほど強固なセキュリティであってもユーザの恣意的な(あるいは過失における偶然性よる)情報漏洩にはその脆弱性を露呈することになる。したがってソフト面ではユーザのモラルの醸成、ハード面では物理的なアクセス制限、つまりユーザのアクセス権をユーザIDのみでなく、端末にも依存させる、という対策が必須である。
 というわけで、「オフィスへの私用携帯端末の持込禁止」なる前時代的なルールの妥当性については理解できる。
 理解はできるのだが。
「陣内さん? なに携帯睨んでるんですか?」
「いや、別に?」
 理一は同僚の問いに肩をすめるてみせると、ロッカーに携帯を放り込んでロックした。
 理解できても、納得のできないことはある。
「恋人でもできたか?」
「なぜ?」
「大抵の女性は、一日一回未満、それも深夜にしか連絡の取れない相手には、誠意を見出だしてくれない」 若いうちに結婚して、そんな経験はないはずの同僚が、横から口を挟む。
「彼女ができると、途端に持込禁止ルールが恨めしくなるんですよねって、陣内さん彼女さんできたんですか!?」
「いや」
 事実違ったので、簡単に否定すると、年若い同僚はため息をついた。訳のわからないリアクションはやめて欲しいところだ。
 しかし、指摘どおり、そのルールを恨めしく思っていたのは事実だった。彼は女性ではないけれど。
 高校生の時間は長い。こちらにとってはあっという間の1ヶ月が、彼にとっては同じ長さではない。
 分かってはいても、仕事が立て込めばマトモな時間に職場を出られるはずもない。高校生を相手に深夜にメールを送るのも気が引けて、そんなことをしているうちに、メールさえしない日が積み重なる。
 何日メールをしていないのだったか、数えては慌てて無理矢理予定を開けて連絡する、そんなことの繰り返しで少し、苛々する。
 いつでもOZで会えるからなどと、気楽に言える職業が羨ましいと、思うくせに、じゃあ転職しようとは思わない辺りが致命的だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ