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□【Gift】さいごのえがお さいしょのなきがお
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 最期になぜ笑みを浮かべることができたのか、自分でも分からない。

 ただ、あとから思った理由は馬鹿馬鹿しいとしか言い様のないものだった。


 彼の人はそれを聞いたら、どんな顔をするのだろうか。それが怖くもあり、少し楽しみでもあった。



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 きらりと何かが光った気がして、豊久は目を開いた。
 目に映ったのはぼんやりと明るい煤けた天井で、豊久は初めて違和感を覚えた。死した己の居るべきは冷たい土の中(あるいは野ざらしならば土の上)のはず、もしも地獄極楽であるとしてもこのような俗世の景色の筈はない。
 覚醒する直前に光を感じた方角へ首を廻らせようとして、豊久は痛みに呻いた。
 途端、何かが飛びついてきた。
 軽くはないその衝撃に再び声を漏らすと慌てた気配が離れる。続けてすみません、と焦った声が降ってきた。
 ゆっくりと、声の主を捉える。大きな瞳から大粒の涙をぽろぽろと零していた。

ああ、光はこの涙だったのだ、と豊久は理解した。
「豊久……殿」
よかった、本当によかったと掠れた声で繰り返す西軍大将に、豊久は伯父の生死と戦の行方を問うた。
「島津殿はご無事です。戦につきましては改めてお話しします」
だからまずは身体を休めてくださいと諭され、豊久は素直に頷いた。伯父が無事ならばそれでよい。

それに。

「……!」
 豊久は思わず身を浮かせ、痛みに沈む。心配して肩に触れた三成を拒絶するように身を返し背を向ければ、後ほどまた来ますと小さな声で告げ、三成は姿を消した。


 豊久は強く強く目を閉じる。考えるな、眠れ眠れと自身に言い聞かせながら。

 彼の無事など関係ないのだと言い聞かせながら。
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