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□もやもやのもと
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顔を上げると、二人は笑顔で会話を交わしている。学校帰りなのか、制服姿の芦川は、少し背が伸びたようだった。
といっても、宮原は更に背が伸びている。更にいえば、ここにいない亘も宮原に迫る勢いで伸びていた。
小村はといえば、中学に入って伸びているものの、成長著しいとまではいえない。早い話が、4人の中でいちばん背が低いのだ。
「どうした小村? 珍しく大人しいな」
いつもならうるさいくらいに話しかけてくるのにと、芦川が含み笑いをする。つられたように宮原も笑う。
「そうだね。芦川があんまりキレイになったからびっくりした?」
「バカなこと言うな!」
「それはテメーだろうが宮原!」
二つの声が――いや、正確には二つめの怒声が、周りの音をかき消した。
しん、とした空気を破ったのは、いちばん驚いているらしい小村だった。
「…悪い。またな」
伝えるというにはあまりに微かな声で別れの言葉を口にすると、小村は二人に背を向けて駆け出した。
残された二人は呆然と、立ち尽くすことしかできなかった。