限りなく黒い白三章第五部〜 ロストメモリーズ 〜

良い気分だ・・・

暖かい・・・

優しい・・・

声・・・

ここは・・・

・しらひめ・
黒!黒!?

おーきーろー!

・黒・
んっ?・・・

お・・・おはよ!

・しらひめ・
おはよ!

珈琲だよ!

飲んでね!

・黒・
彼女の笑顔にドキッとする・・・

あっありがと!

何か照れくさい・・・

良いな・・・

この感じ・・・

自分を確認出来る感覚・・・

幸せ・・・なんだよね・・・

・しらひめ・
今日はこの前の結婚式の挨拶も兼ねて、実家に行こうね!

黒も早く用意してね!

・黒・
!!!

結婚・・・!?

したの・・・?

あんなに難しかったのに・・・

いつ・・・?

・しらひめ・

頭は大丈夫ですかー?

それとも、もう飽きた?

彼女がニコッと笑う。

・黒・
嘘・・・

じゃないのは分かる・・・
けど、ついこの間一緒になるのは難しいって話したばかりだし・・・

記憶がない・・・

一体何時・・・?

・しらひめ・
まったくー!

ボケるの早すぎだよ!(笑)
やっと、一緒になれたね・・・

・黒・
そう言えばさー・・・

・・・

・しらひめ・
何っ・・・?

どうしたの?

・黒・
えっ・・・

何言おうとしたっけ?

ハハッ・・・

多分分かってる・・・

醒めたくない・・・だな。
もしかしたら・・・

これが・・・


まさか、この後に自分の口から・・・




考えたくないから、支度をして出掛ける・・・・

何時もと変わらない景色・・・

変わらない風の匂い・・・
・黒・
ありがとう・・・

んっ?何でこんな事を?

・しらひめ・
約束・・・

守ってくれたね・・・

いっぱい苦しませて・・・
ごめんね・・・

でも、一緒になってくれてありがとう・・・

やっと2人の願いが叶ったんだね・・・

そう言いながら、しらひめがいきなり哭いた・・・

確かに・・・

今までが嘘のような今・・・

本当はあっちが嘘の・・・
急にさっきの事を思い出した・・・


・しらひめ・

でも、可笑しかったよね!
この前の結婚式!

黒がさー・・・

ポツッ・・・

ポツッ・・・

ザー・・・

!?

雨だ!

僕たちは近くの大きな樹に避難した・・・

・しらひめ・

もう、何で2人の時は雨が多いんだろうね・・・・

でも、いっか!


そう言いながら彼女が腕にしがみついてきた・・・

なくしたくない・・・

次の瞬間・・・

意識は薄れ、僕と彼女が見えた・・・

あれっ・・・?

駄目だ・・・感覚はあるのに、動かない・・・

話は続く・・・

・黒・
この前の結婚式何だけどさ・・・

・しらひめ・
何ー?

!!!
駄目だ!ソレを聞いたら僕は・・・・

無我夢中で止めようとした・・・

いくら足掻いても無駄だった・・・

意識が薄れていく・・・

・しらひめ・
黒!黒!?

起きて!

もう、今日は遊びに行く予定でしょ!


薄れ行く中で、別の目覚に気付く・・・

・黒・
んっ?

おはよ・・・

寝た筈なのに、変に疲れた感じがする・・・

なんだろ・・・?


・しらひめ・

はい、珈琲だよ!

大丈夫?何か疲れてるみたいだけど?

・黒・

・・・徐々に眠りから醒める・・・

・しらひめ・
はぁ〜、早く一緒になりたいね・・・

一緒だったら、帰らなくて良いし、いっぱい遊べるのに・・・

・黒・
!!!

・・・思い出した・・・!
ねぇーしらひめ?

僕達、結婚したんじゃなかったっけ・・・?

・しらひめ・
あははっ(笑)

何言ってるの!?

今は恋人期間中でお互いを知ろう!って、この前の決めたばかりでしょ。

もう、忘れっぽいんだから・・・

・黒・
だよねー!

ごめん、早くしたくて、ボケてしまった・・・

ハハッ・・・

だよね・・・

分かってた・・・

夢だって・・・

少し気落ちしたあと・・・
僕達は出掛けた・・・

少しの落胆と大きな希望・・・

2人ならきっと・・・

互いが望んで止まない未来へ・・・

いつか・・・

きっと・・・








限りなく黒い白三章終章
〜 合鍵と隣人 〜

[黒]
あの夢は・・・
何かの前触れなのだろうか・・・?

今までにない紅葉感・・・
まるで、何かを支配したような・・・

でも、あれ以来、同じ夢を見なくなった・・・

望んでいないのか・・・?
それとも、幸せの拒絶・・・

望んでいた筈の幸せが違ったのか・・・?

何故・・・?

・・・分からない。

心の奥にある「トビラ」は開いたまま・・・
彼女もソコにいるはずなのに・・・

なんなんだ・・・







今日は久々に一人で過ごす休日・・・

静かな部屋・・・

いつも聞こえていた声・・・
手の温もり・・・

唇・・・躯・・・

それらが、今日は虚しく心の中に響く・・・

何時も以上に彼女を想う・・・
今何処で・・・

今何をしていて・・・

何を考えているのか・・・
気になる・・・?

・・・違うな。

この気持ちは支配欲に近い・・・
これも、こんな気持ちも愛になるのかな・・・?

SとMの狭間・・・

そんな違和感・・・

さて・・・

今日は何をしようか・・・
いざ、一人になってみると異常にやることがない・・・
今までどうしてきたのかも思い出せない・・・

彼女が居ればこんなこともないのにな・・・

気持ちが自然に彼女を追ってしまう・・・

不透明で不確かな彼女・・・
今は追えば追うほど、深みにはまっていく・・・

それでも、気持ちの高鳴りは止まらない・・・

彼女を追い続け・・・想い続ける事で本当に幸せにたどり着くのだろうか?

起きてから間もないのに、考えるのは彼女の事ばかりだ・・・

眠たい目を擦りながら思う・・・

いっそ、ストーカーや拉致や監禁・・・

それをしてしまった方が・・・

軽く笑って、少し落ちる・・・

ふぅ〜・・・

良い天気だし、外にでも出てみるか

曇りか・・・

彼女を思うと、喜びと同時に、苦しみもやってくる・・・

家に居ても・・・

仕事場に居ても・・・

寝ても覚めても・・・

夢の中でも・・・

しらひめ・・・

今までは日に日に気持ちは落ち着いたりしていた筈が・・・

気持ちが・・・落ち着かない・・・

日に日に大きくなるばかりで・・・

このままだと、多分・・・
彼女に対して取り返しのつかない事をしてしまうだろう・・・

奪いたい・・・

今までから彼女を・・・

僕は今まで極度に人の負担になるような事は避けてきた・・・けど、この人だけには、全部伝えて・・・

寄りかかりたい・・・

少し疲れた・・・

こうして歩いていると・・・
よく一人で華をみに行っていた事を思い出す・・・

何故、華が好きになったのか・・・

元々は親の受け売り・・・
でも、多分・・・華は同じ生き物でも、大切に育てれば、それに純粋に答えてくれるから、かもしれない・・・

歩いていた・・・只、何も考えずに・・・

[しらひめ]
黒・・・!黒・・・!!

あー、やっぱり黒だ!

どーしたの?こんな所で?
黒はV系なんだから、似合わないねこういう所(笑)

でも、黒の心に似てるよね・・・華は・・・。

[黒]
ひめはなんでこんな所に・・・?

[しらひめ]
ちょっとね〜(笑)

お華・・・観たくなって・・・。



彼女がしゃがんで、華を愛でている・・・

ドキッとした・・・

まるで、小さな華達の中で咲いている華に見えて・・・

僕は何とも言いがたい光景に見いっていた・・・

それから、彼女と草葉に寝そべりながら、話の中で胸の内・・・

気持ち・・・不安・・・これから・・・

今思っている全てを打ち明けた・・・

彼女は笑顔の中にうっすら涙を流す・・・

そして、静かに・・・そっと・・・
抱き寄せてくれた・・・

僕は安心からか意識が遠退く・・・

意識が閉じてしまう前に、霞む指先を見ながら、彼女に前々から渡そうと思っていた物を渡した・・・

「記念日の入ったストラップ」を・・・

それから、時がどれだけたったのか・・・

気がつくと彼女は居ない・・・

又、僕の妄想か・・・
特に気にする事なく寝そべっていた・・・

ふと気が付くと・・・

胸に一輪の鈴蘭を握っていた・・・

その一輪の華はまるで、しらひめの気持ちの様に思えた・・・

花言葉は「純粋、幸福の再来」・・・

でも、何で彼女は何も告げずに消えたのだろうか・・・?

しらひめが鈴蘭?

・・・まさかね。

翌週・・・

彼女とのデートの日がやってきた・・・

その日も彼女とね楽しく、大切な時間と思い出とを、作る事が出来た。

そして・・・

別れの時が来る・・・

もう何回も体験している時間・・・

仕方ない・・・

結婚してるんだから・・・
付き合って間もない・・・
そんな只の理由を自分に言い聞かせて、別れる・・・
今日は別れ間際に、彼女の手を取り「ある物」を渡した・・・

それを・・・

彼女は返そうともせず、にっこり笑って・・・泣いた・・・

いつか、それが彼女にとって合鍵じゃなく・・・
僕も隣人ではなくなる事を切に祈りながら・・・

彼女を見送った・・・






三章 完

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